小説 「妄想の仮面」 第三章・・・
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『妄想の仮面』 紅殻格子
三.夫の独白(二)
ライバルを蹴落として、私は由美子を勝ち取った。
その豊穣な乳房を独り占めにしたのだ。
勝者への褒賞はそれだけではなかった。
透き通るほど白くきめ細かい肌、鋭角にくびれたウエスト、
きゅっと引き締まった弾力のあるヒップ。
まるでラテン系の女かと見紛うほど、
由美子の肢体はグラマラスなフォルムを保っていた。
しかも由美子は男を知らなかった。
肢体だけ見れば、派手で男好きな女と勘違いしそうだが、
両親がともに固い教師だけあって、
その性格は地味で堅実、男に従順なタイプだった。
迷うことなく私は由美子と結婚した。
由美子は会社を辞めて専業主婦になった。
娘の愛美を授かってから、思った通りの良妻賢母ぶりを発揮し、
傍目も羨むほどの円満な家庭を築き上げてくれた。
幸せな家庭生活。
だが心の奥底に巣食った性の刻印は、
癌細胞のように静かな増殖を繰り返していた。
そして気づいた時、私はすっかり黒い妄想に身も心も支配されていたのだった。
妄想は私に命じる。
『妻が他の男に抱かれる姿を見たい』
むろん私は由美子を愛している。
妻としても母としても非の打ちどころがない。
由美子は生涯の伴侶として申し分なかった。
肢体も愛美を出産してから熟度を増し、
三十路後半の女盛りに相応しい艶が出てきた。
より豊饒になった乳房はもとより、
ウエストからヒップにかけて脂肪が乗った肌は、
上質な手触りを楽しませてくれる。
私は煩悶する。
何故私は愛する妻を他人に委ねたいと思うのか?
悪魔と取引することで、私が手にできる黒い愉悦とは何なのだろうか?
だが私は躊躇せざるを得なかった。
妻を他人に抱かせるなど、妄想の世界では許されても、
現実の世界では狂人としか思われまい。
大体、由美子がそんな変態行為を受け入れてくれるはずがない。
逆に受け入れられでもしたら、一番困るのは私自身だともわかっていた。
だが妄想は、理性で抑えることなどできなかった。
私はすがる思いで同じ妄想を持つ仲間を探した。
スワッピング・3P・輪姦――私は雑誌やサイトで密かに研究を重ねた。
まずは男性の確保が必要だった。
由美子が好意を持てる男でなければならないし、
私が信頼の置ける男でなければならない。
そして巧みなシナリオが求められる。
ごく自然な流れの中で、由美子が体をその男に委ねられるように、
用意周到なお膳立てをしてやることが大切だ。
私は妄想を誤魔化しながら、実行する時を焦らずに待った。
そして私は四十二歳を迎えて、性の深淵への第一歩を踏み出すチャンスを得たのだった。
つづく・・・
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