小説「内助の功」第二章・・・(紅殻格子)
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「内助の功」 紅殻格子
二
妻を抱いている最中だった。
しかも、ベッドで大股開きの陰部を愛撫している途中で、
裕一は夢想の世界に迷い込んでしまったのだ。
「ご、ごめん」
「ごめんじゃないわ。何を考えていたか知らないけど、
レディに対して失礼よ。わかったら早く続けてよ」
「・・はい」
裕一は再び早紀の花芯に舌先を伸ばした。
その塩辛い味が、先ほどまでの甘い幻想を霧散させた。
社員二千人を動かす社長どころか、現実の裕一は、
たった一人の妻にさえ頭が上がらない男なのだ。
(夢のまた夢か・・)
実は会社でも、裕一は出世競争の脱落者だった。
同期の半分以上はすでに係長に昇進している。
本社総務部への配属も、活躍を期待されての栄転ではなく、
営業時代上司だった支社長に疎まれての左遷に違いなかった。
その証拠に以来三年間、本社ビルの設備管理という閑職で、
裕一は冷や飯を食わされ続けている。
前上司の支社長は、人事部に裕一の無能ぶりを喧伝してくれたらしい。
だが事実は仕事の能力と無関係で、疎まれた本当の原因は、
支社長の不倫現場を目撃したことにあった。
係長昇進を目前にしたある日の午後、
得意先に提出する見積書を忘れた裕一は、
営業が外回りに出払った支社へと一人戻った。
ところが見積書の作成を頼んだ内勤女性社員の姿もない。
裕一は慌てて無人の事務所を探し回った。
すると応接室から物音が聞こえた。
裕一がノックもせずドアを開けると、果たして彼女はそこにいた。
ただ彼女は、スカートを捲り上げ、ソファの上で支社長に後ろから犯されていた。
裕一は腐った。
能力がないなら諦めもつく。 だが裕一は運がなかったのだ。
もし活躍の場を与えられれば、
持てる力を振り絞って会社に貢献する自信があった。
だが今の裕一には、無能のレッテルを剥がしてくれる人脈がない。
解決できないジレンマを抱え、裕一は苦痛に満ちた毎日を送っていた。
つづく・・・