小説「内助の功」第一章・・・・(紅殻格子)
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「内助の功」 紅殻格子
一.
本間裕一は密かに野心を抱いていた。
(社長になる)
人一倍権力欲が強い裕一は、大勢の社員達を一糸乱れず統率し、
号令一下思うがままに動かすことを夢見ていた。
社長を目論む裕一は、あえて業界中堅の岩井建設に活躍の舞台を求めた。
そして七年間に及ぶ支社営業の下積みを経て、
三年前に本丸である本社総務部へ配属された。
裕一は今年三十三歳、そろそろ頭角を現さなければならない歳を迎えている。
だがまだ会社は、埋れている裕一の才能に気づいていなかった。
今はまだ平社員に甘んじているが、それは世を忍ぶ仮の姿で、
転機はきっと来ると裕一は信じていた。
近い将来、トップから実力を認められ、一足飛びに出世の階段を登りつめる。
そして社長への就任を三顧の礼で乞われた裕一は、
従業員二千人を率いて岩井建設を業界トップへと導くのだ。
裕一は未来の自分を夢想した。
会社の権力を掌握した暁には、誰に遠慮することなく栄華を謳歌できる。
昼は脚がすらりと伸びた美人秘書にかしずかれ、
夜は艶やかな銀座の蝶の群れに集られる。
もしその気になれば、若い愛人を囲って瑞々しい肉体を
貪り尽くすこともできるのだ。
英雄色を好む――もちろん裕一も嫌いな方ではない。
裕一はだらしなく鼻の下を伸ばした。
その時。
「ちょっと、何ぼんやりしてんのよ」
刺々しくなじる声で、裕一はふと我に返った。
目の前には、見飽きた・・否、見慣れた女性の陰部が、
クローズアップで迫ってきていた。
やや黒ずんだ歪な花弁がほころび、
光沢を帯びた薄紅色の花芯が露になっている。
花弁の合わせ目には、桃色の真珠にも似た花芽がすでに迫り出している。
そして恥丘に繁茂する逆毛の向こうに、妻、早紀の怒った顔が見えた。
つづく・・・