『人外境の花嫁』十一.人外境の怨讐者(四)
『人外境の花嫁』
十一.人外境の怨讐者(四)
男達は周囲に銃口を向けたまま、ゆっくりと大聖天堂の祭壇へとにじり寄った。
「今見た通り実弾を込めている。ちょっとでも動いたら命は保証しないぜ」
中央にいる男が低い声で恫喝すると、天神会の幹部連中は凍りついたように静止した。
月絵が叫んだ。
「あ、兄貴っ!」
兄の吉水憲治だった。
そして憲治をガードしているのは、家に出入りしている若葉会の若い衆である。
「おう、月絵、 大丈夫・・な、の、か?」
「姐さん、もう安心して・・下さい・・え、パンツ一枚なんですか?」
勇ましく天神会に乗り込んできた若葉会の男達だが、ショーツ一枚きりで乳房丸出しの月絵に、困惑するような表情をして目を逸らせた。
憲治は何度か咳払いすると、銃を菜穂と子猿に向けながら、若い衆に命じて月絵と降矢木、そして畠山の縄を解かせた。
「月絵、若い者に目の毒だから、そこいらにある服を早く着ろ」
「え・・あ、厭っ!」
まだ淡い蕾をつけた乳房が揺れる重みに気づいた月絵は、慌てて足許に落ちている儀礼服で胸元を隠した。
乱裁が言葉を荒げた。
「香具師がハジキを振り回す時代になったのか、金治よ」
乱裁が睨みつける大聖天堂の扉から、黒服の若者を従えた吉水金治が姿を現した。
「寛三兄貴、ご無沙汰しておりました」
鳶色の着流し姿の金治は、乱裁に向かって深々と頭を下げた。
つづく…
theme : 官能小説・エロノベル
genre : アダルト