『人外境の花嫁』 十.暗黒の救済者(十五)
『人外境の花嫁』
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十.暗黒の救済者 (十五)
全身が軽くなった。
「先生っ!」
猿轡と後ろ手縛りから解放された月絵は、止めどなく流れる涙を拭おうともせず、全力疾走で降矢木の許へ向かった。
(抱きしめて欲しい)
その一心で、月絵は足がもつれそうになりながら走った。
大聖天堂は、中央にある祭壇が低い擂り鉢状で、乱裁の近くにいる降矢木へ走る月絵の体は、厭でも下り坂で加速度がつく。
「先生、ごめんなさいっ!」
大声をあげて、一メートル先にいる降矢木の胸に抱きつこうとした時、足が踏み出せずふわっと体が前のめりに浮くのを感じた。
時間が止まった。
コマ送りで宙を飛ぶ月絵の体が、慌てて逃げようとする降矢木の背中にぶつかった。
「うわっ、馬鹿者!」
月絵が体当たりした反動で、降矢木はフロアにもんどりうって倒れた。
その瞬間、命綱の携帯が、降矢木の手を離れて天神会幹部の足許に転がった。
するとその幹部は、反射的に携帯を力一杯踵で踏みつけた。
「・・・・」
大聖天堂が凍りついた。
降矢木と月絵、そして畠山は、表情を強張らせたまま、その場にへたり込んだ。
「せ、先生・・」
恐る恐る顔色を窺う月絵に、降矢木はただ「はあ・・」と大きなため息をついた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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