『人外境の花嫁』 十.暗黒の救済者(十四)
『人外境の花嫁』
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十.暗黒の救済者 (十四)
真相を吐き出した降矢木は、天台宗の厄除である角大師のように痩せ細って骨皮筋右衛門になっていた。
「それはさておき、私はそろそろ帰らなければなりません。そもそも書きかけの原稿があるのに、こんな山奥まで来なければならなかったのは、あそこにいる馬鹿二人のせいなんですよ」
そう言うと、降矢木は惨めに戒められた月絵と畠山を指差した。
猿轡で声が出せない月絵は、大きく首を振って呻くことしかできなかった。
(先生、ごめんなさい。もう二度と先生に逆らいません。お願い、助けて下さい)
込み上げてくる感情の高まりに、月絵は半狂乱の態で上半身をくねらせた。
それは犬が飼い主に激しく尻尾を振って喜ぶ姿に似ていた。
犬と違うところは、尻尾でなく、乳房を上下左右に揺さぶっているところだろう。
降矢木はじっと月絵の胸元を見つめた。
「ふ~ん、まあ、なかなか立派なオッパイであることは認めるけどね・・」
テレッと相好を崩した降矢木を見て、月絵はポッと顔が熱くなるのを感じた。
生死に係わる局面ではあるが、月絵は乳房を降矢木に晒していることに初めて気づいたのだ。
(も、もう・・先生ったらこんな時に・・)
恥ずかしさはあったが、乳房を褒められて月絵の女心は疼いた。
コホンと咳払いすると、降矢木は再び乱裁と対峙した。
「私の望みは二人を無事解放して貰うことだけです。あなた方を世間に公表して糾弾するつもりはありません」
降矢木の提案は、二人を人吉警察署の前で解放すると同時に、大麻畑の画像を撮った携帯を天神会側に引き渡すと言うものだった。
「・・良かろう」
乱裁はしばらく考えて、降矢木の交換条件を呑んだ。
「二人の戒めを解いてやれ」
菜穂と子猿は不服そうな顔で、乱裁の命令に従って月絵と畠山の拘束を解いた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。