小説 「夜香木」 第七章・・・
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「夜香木」 紅殻格子
七.
その夜、金山美佐江はベッドの中で、なかなか寝つかれずにいた。
体は疲れているはずなのに、不思議と神経は昂ぶり、まんじりともできない。
(昼間見た熱帯植物のせいかしら・・・?)
温室に咲き乱れていた原色の花々と、充満する濃緑の空気は、足を踏み入れた者の神経を昂ぶらせるのではないだろうか。
熱帯植物の中には、強壮剤や覚醒剤のような成分を持つものがあると、少年が言っていたのを美佐江は思い出した。
(きっとそうだわ。今夜珍しく夫が体を求めてきたのも、あの妖しい植物の強壮作用のせいだわ。・・・・でも・・・)
隣で高鼾で寝ている和夫を見て、美佐江はなまめかしいため息をついた。
夫の体を受け入れた後も、美佐江の体の奥に埋み火が残っていた。
それは初めて体験する体の火照であった。
(いつもはこんな感じにならないのに・・・)
美佐江はパジャマの上着の裾を手繰ると、ノーブラの乳房に手を当てた。
一児を育てあげた四十女の乳房は、若い頃の弾力こそ衰えたものの、その形はまだそれほど崩れてはいなかった。
美佐江はマシュマロのような感触を楽しみながら、敏感になっている小さな先端を摘んだ。
(ああ、おかしいわ・・・)
全身に電流が走り、下腹部が熱くなる。
美佐江は和夫と結婚するまで、男を知らなかった。
和夫は仕事に忙しく、新婚当初から今で言うセックスレス夫婦であった。
美佐江が体を求められるのは月一回ほどで、絶頂感を経験したこともなかった。子育てに追われるようになると、ますます和夫との夜の生活は疎遠になっていった。
しかし他に男も知らず、絶頂感も知らない美佐江にとって、それは当たり前のことであり、不満を感じてはいなかった。
(また濡れてきてる・・・)
しかし今夜は違った。
ほとんど愛撫もない和夫とのセックスでは、一度熾ってしまった女の火照りを鎮めることはできなかった。
つづく・・・・