『人外境の花嫁』十.暗黒の救済者(四)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
十.暗黒の救済者 (四)
名残り惜しげに裸女から離れた降矢木は、乳首を摘まんだ指を向け、祭壇に立つ乱裁道宗を大音声で質した。
「大麻の売買で得た利益が、天神会の資金源であることを認めますね、乱裁道宗さん。いや、乱裁道宗こと足立寛三さん」
やっと正気に戻ったのか、凛と通った降矢木の声が大聖天堂に響き渡った。
乱裁はふっと笑みを浮かべた。
「やれやれ、無粋な男が現れたもんじゃ」
「ええ、よくそう言われます」
「だが大麻は悪か?」
「いえ、大麻は昔から人間の役に立ってきた植物です。麻布、医薬品、神具などと有用性が高く、世界中で栽培されてきました」
大麻自体が邪悪なのではなく、麻薬として使う人間が愚かなのだと降矢木は言った。
「ならば愚か者が大麻を買う金は無駄金じゃろう。無駄金を集めて、貧民を救済することこそ真の慈善事業ではないかの?」
薬物を買う金でホームレスを救えれば、役立たずな麻薬中毒者でも、立派に社会貢献することになると乱裁は嘯いた。
降矢木はにっこり笑った。
「ご意見ご尤も。信者から金を絞り取らない宗教は斬新です。しかし金を貢がせられるところに、宗教の心酔感があるのかもしれませんがね」
「ふむ、面白い男だな」
凍りつく大聖天堂で、乱裁は降矢木との会話を楽しんでいるようだった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
十.暗黒の救済者 (四)
名残り惜しげに裸女から離れた降矢木は、乳首を摘まんだ指を向け、祭壇に立つ乱裁道宗を大音声で質した。
「大麻の売買で得た利益が、天神会の資金源であることを認めますね、乱裁道宗さん。いや、乱裁道宗こと足立寛三さん」
やっと正気に戻ったのか、凛と通った降矢木の声が大聖天堂に響き渡った。
乱裁はふっと笑みを浮かべた。
「やれやれ、無粋な男が現れたもんじゃ」
「ええ、よくそう言われます」
「だが大麻は悪か?」
「いえ、大麻は昔から人間の役に立ってきた植物です。麻布、医薬品、神具などと有用性が高く、世界中で栽培されてきました」
大麻自体が邪悪なのではなく、麻薬として使う人間が愚かなのだと降矢木は言った。
「ならば愚か者が大麻を買う金は無駄金じゃろう。無駄金を集めて、貧民を救済することこそ真の慈善事業ではないかの?」
薬物を買う金でホームレスを救えれば、役立たずな麻薬中毒者でも、立派に社会貢献することになると乱裁は嘯いた。
降矢木はにっこり笑った。
「ご意見ご尤も。信者から金を絞り取らない宗教は斬新です。しかし金を貢がせられるところに、宗教の心酔感があるのかもしれませんがね」
「ふむ、面白い男だな」
凍りつく大聖天堂で、乱裁は降矢木との会話を楽しんでいるようだった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
にほんブログ村
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。