『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(八)
『人外境の花嫁』
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八.山奥の探索者 (八)
車は球磨川を離れて、深い山塊へと分け入って行く。
崖っぷちの林道を縫うように走る頃には、すっかり人家も絶え、樹海と呼ぶに相応しい無辺の森林が広がっている。
菜穂が月絵と畠山を気遣う。
「この山を越えれば箕面谷よ」
「うぷっ、すごい山道ですね」
昨夜からの二日酔いと車酔いで、青い顔をした畠山はすでにグロッキーに見えた。
月絵は空のレジ袋を畠山に渡しながら、何気なく菜穂に訊ねた。
「箕面谷にある宗教法人って、この辺りでも有名なんですか?」
「ええ、大きな建物だから・・でもわざわざこんな山奥まで来るなんて、よほど大事な取材があるのね」
「本当は人を捜しているんです」
「よくある話ね。家族の反対を押し切って、誰かが入信しちゃったとか?」
「いえ、横浜に住む知り合いの女性が、連れさらわれてしまったんです。きっと天神会が関係していると思って・・」
そこまで話した月絵は、背筋がぞっと冷たくなるのを感じた。
ルームミラーへ目を遣った。
ほんの一瞬だが、鏡を通して菜穂の夫と目が合った。
まるで執念深い蛇のような眼で月絵を見ていたのだ。
夫はすぐに目を逸らしたが、その邪悪な表情に月絵は生理的な嫌悪を覚えた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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崖っぷちの林道を縫うように走る頃には、すっかり人家も絶え、樹海と呼ぶに相応しい無辺の森林が広がっている。
菜穂が月絵と畠山を気遣う。
「この山を越えれば箕面谷よ」
「うぷっ、すごい山道ですね」
昨夜からの二日酔いと車酔いで、青い顔をした畠山はすでにグロッキーに見えた。
月絵は空のレジ袋を畠山に渡しながら、何気なく菜穂に訊ねた。
「箕面谷にある宗教法人って、この辺りでも有名なんですか?」
「ええ、大きな建物だから・・でもわざわざこんな山奥まで来るなんて、よほど大事な取材があるのね」
「本当は人を捜しているんです」
「よくある話ね。家族の反対を押し切って、誰かが入信しちゃったとか?」
「いえ、横浜に住む知り合いの女性が、連れさらわれてしまったんです。きっと天神会が関係していると思って・・」
そこまで話した月絵は、背筋がぞっと冷たくなるのを感じた。
ルームミラーへ目を遣った。
ほんの一瞬だが、鏡を通して菜穂の夫と目が合った。
まるで執念深い蛇のような眼で月絵を見ていたのだ。
夫はすぐに目を逸らしたが、その邪悪な表情に月絵は生理的な嫌悪を覚えた。
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