『人外境の花嫁』六.伏魔殿の監禁者(四)
『人外境の花嫁』
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六.伏魔殿の監禁者 (四)
夕食をミーアが運んで来た。
窓のない部屋に監禁されている麻美は、時刻が夕飯時なのかと初めて見当がついた。
おそらく一昼夜眠っていたのだろう。
食事はほとんど喉を通らなかったが、天神会に麻美を殺害する意思がないことは明らかになった。
「麻美様が天神会に来られるのは、避けられない運命だったのですよ」
紫色の横浜支部長が語った理由はまだわからない。
そして慈善事業団体を名乗る天神会が、暴力的な拉致を行い、秘密結社めいた儀礼服を身につけているのも謎だった。
再び横浜支部長が現れた。
「まずは私共の施設をご案内しましょう」
麻美はミーアにかしずかれながらエレベーターに乗った。
建物はまだ新しく、エレベーターの階表示を見ると五階建てらしい。
監禁された部屋がある四階から一階へと降りると、そこは小窓がついた狭い空間だった。
「このエレベーターの存在は、外部からは一切わからない構造になっています」
小窓はマジックミラーになっていた。
そこから覗くと、壁越しに床面積百坪ほどはある大広間が広がり、百人以上収容できるテーブルと椅子が並んでいた。
「ここは困っておられる方々に無料で食事を差し上げる場所です。弱者救済、私達の教えを実践する場でもあります」
座席の大半は、煤けた服を着た髭が伸び放題の浮浪者で埋まっていた。
そして彼等の間を、作務衣を着た男女が忙しく給仕して回っている。
「二階と三階は、厨房と食糧庫、そして下級階位者の居室になっています」
「下級・・階位?」
弱者救済を唱える団体にしては、あからさまな差別的な言い様に、麻美は横浜支部長へ訝しげな目を向けた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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夕食をミーアが運んで来た。
窓のない部屋に監禁されている麻美は、時刻が夕飯時なのかと初めて見当がついた。
おそらく一昼夜眠っていたのだろう。
食事はほとんど喉を通らなかったが、天神会に麻美を殺害する意思がないことは明らかになった。
「麻美様が天神会に来られるのは、避けられない運命だったのですよ」
紫色の横浜支部長が語った理由はまだわからない。
そして慈善事業団体を名乗る天神会が、暴力的な拉致を行い、秘密結社めいた儀礼服を身につけているのも謎だった。
再び横浜支部長が現れた。
「まずは私共の施設をご案内しましょう」
麻美はミーアにかしずかれながらエレベーターに乗った。
建物はまだ新しく、エレベーターの階表示を見ると五階建てらしい。
監禁された部屋がある四階から一階へと降りると、そこは小窓がついた狭い空間だった。
「このエレベーターの存在は、外部からは一切わからない構造になっています」
小窓はマジックミラーになっていた。
そこから覗くと、壁越しに床面積百坪ほどはある大広間が広がり、百人以上収容できるテーブルと椅子が並んでいた。
「ここは困っておられる方々に無料で食事を差し上げる場所です。弱者救済、私達の教えを実践する場でもあります」
座席の大半は、煤けた服を着た髭が伸び放題の浮浪者で埋まっていた。
そして彼等の間を、作務衣を着た男女が忙しく給仕して回っている。
「二階と三階は、厨房と食糧庫、そして下級階位者の居室になっています」
「下級・・階位?」
弱者救済を唱える団体にしては、あからさまな差別的な言い様に、麻美は横浜支部長へ訝しげな目を向けた。
つづく…
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