『人外境の花嫁』六.伏魔殿の監禁者(五)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
六.伏魔殿の監禁者 (五)
横浜支部長は続ける。
「一から六階位までが下級階位です。七階位からが上級階位で、この儀礼服を着ることが許されます。
下級階位は、手弁当で弱者に献身することで階位が上がる制度になっています」
「でも何故マジックミラー越しに?」
「麻美様、上級階位の幹部と下級階位の奉仕者は、根本的に役割が違うのです。
上級階位を得た幹部は、世間にその実態を明かしてはならない決まりになっています」
尤もこの恰好で街を歩いたら警察に捕まりますけどと、支部長は股間をぶらぶら揺すって笑った。
天神会横浜支部には、総勢百人の人間が出入りしている。
内八十人は下級階位に属し、他の仕事を持ちながら、ボランティアで炊き出しなどの活動に参加していると言う。
もちろん彼等を指導するのは残り二十人の上級幹部だが、マジックミラーから表へ出る時は、下位階位者同様の作務衣を着なければならない。
つまりこの建物の四階と五階、そしてマジックミラーで仕切られた秘密空間こそに、下級階位者が窺い知らぬ天神会の実像があるようだ。
麻美は支部長を睨みつけた。
「そんな差別と秘密主義なんて、天神会が目指す弱者救済に反するんじゃないの?」
「さすがは麻美様です。しかし宗教団体などというものは、必然的に矛盾を孕んでいるものなのです」
「それは?」
「理想と現実には溝があります。それを解決するのが金です。その金を集めるのが上級幹部の役割なのです」
支部長は食事にありつく浮浪者達を見ながら、ふふっと小さく鼻で笑った。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
六.伏魔殿の監禁者 (五)
横浜支部長は続ける。
「一から六階位までが下級階位です。七階位からが上級階位で、この儀礼服を着ることが許されます。
下級階位は、手弁当で弱者に献身することで階位が上がる制度になっています」
「でも何故マジックミラー越しに?」
「麻美様、上級階位の幹部と下級階位の奉仕者は、根本的に役割が違うのです。
上級階位を得た幹部は、世間にその実態を明かしてはならない決まりになっています」
尤もこの恰好で街を歩いたら警察に捕まりますけどと、支部長は股間をぶらぶら揺すって笑った。
天神会横浜支部には、総勢百人の人間が出入りしている。
内八十人は下級階位に属し、他の仕事を持ちながら、ボランティアで炊き出しなどの活動に参加していると言う。
もちろん彼等を指導するのは残り二十人の上級幹部だが、マジックミラーから表へ出る時は、下位階位者同様の作務衣を着なければならない。
つまりこの建物の四階と五階、そしてマジックミラーで仕切られた秘密空間こそに、下級階位者が窺い知らぬ天神会の実像があるようだ。
麻美は支部長を睨みつけた。
「そんな差別と秘密主義なんて、天神会が目指す弱者救済に反するんじゃないの?」
「さすがは麻美様です。しかし宗教団体などというものは、必然的に矛盾を孕んでいるものなのです」
「それは?」
「理想と現実には溝があります。それを解決するのが金です。その金を集めるのが上級幹部の役割なのです」
支部長は食事にありつく浮浪者達を見ながら、ふふっと小さく鼻で笑った。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。