『人外境の花嫁』五.秘苑の懊悩者 (十)
『人外境の花嫁』
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五.秘苑の懊悩者 (十)
金治は泣きべそをかく月絵に、やさしく徳利を差し出した。
「降矢木君はそこらで遊んでいる男どもとは人種が違うからな。月絵も難しい男に惚れてしまったもんだわ」
「ほ、惚れただなんて・・」
「よいよい。あの男に惚れるとは、さすがわしの娘だと感心するわい」
酔った金治は呵々大笑して月絵の頭を撫でた。
「パパ・・」
「わしもこの年になるまでいろいろな男を見てきたが、やつほど底が見えない器の男は初めてじゃ」
金治に慰められて、月絵はほろりと一粒の涙を杯に落とした。
家庭教師時代から、金治は降矢木を買っていた。
月絵の心を開いた実績は元より、彼はテキヤの大親分の家でよく晩飯をたかった。
「家に帰っても晩ご飯がないもので」
降矢木は平然とした顔で、腕に刺青を施した若い衆に飯をよそらせた。
時には金治の前で、月絵を口の利き方が生意気だと怒鳴り散らすこともあった。
降矢木は決して豪胆な男ではない。
だだ世間一般の常識と偏見がないのだ。
金治は月絵にやさしく語りかけた。
「じゃがな、月絵。わしの娘なら、どんなことをしても、気難しい降矢木君の心を奪ってみせなさい」
「・・うん」
月絵は小さく頷くと、注がれた杯をまた一気に飲み干した。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「ほ、惚れただなんて・・」
「よいよい。あの男に惚れるとは、さすがわしの娘だと感心するわい」
酔った金治は呵々大笑して月絵の頭を撫でた。
「パパ・・」
「わしもこの年になるまでいろいろな男を見てきたが、やつほど底が見えない器の男は初めてじゃ」
金治に慰められて、月絵はほろりと一粒の涙を杯に落とした。
家庭教師時代から、金治は降矢木を買っていた。
月絵の心を開いた実績は元より、彼はテキヤの大親分の家でよく晩飯をたかった。
「家に帰っても晩ご飯がないもので」
降矢木は平然とした顔で、腕に刺青を施した若い衆に飯をよそらせた。
時には金治の前で、月絵を口の利き方が生意気だと怒鳴り散らすこともあった。
降矢木は決して豪胆な男ではない。
だだ世間一般の常識と偏見がないのだ。
金治は月絵にやさしく語りかけた。
「じゃがな、月絵。わしの娘なら、どんなことをしても、気難しい降矢木君の心を奪ってみせなさい」
「・・うん」
月絵は小さく頷くと、注がれた杯をまた一気に飲み干した。
つづく…
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