『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十四)
『人外境の花嫁』
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四.黄昏時の掠奪者 (十四)
麻美は昭和五十年生まれだから、母が故郷へ戻って父親と再会するのもその頃だ。
ならば足立寛三という人物が、麻美の父親なのだろうか?
後生大事にしまっていた手紙。
だがそこまでは断じ切れない。
足立寛三なる人物が、大阪水商売時代の贔屓客である可能性も十分ある。
やはり鍵はこの絵文字だった。
漢字の成り立ちは絵文字だったと言われるが、それに似ていないこともない。
或いは何かの暗号であろうか。
仲間のことを喋れば殺されると母は言っていた。
それでこのような絵文字を通信手段に用いていたのか。
いずれにしても、この絵文字が麻美の父を知る唯一の手掛かりだった。
その解読を頼むため、麻美は降矢木の許へ立ち寄った。
だが焼餅焼きのアルバイト娘に邪魔されてしまったのだ。
降矢木は麻美の得意客である。
だが明らかに変な客でもあった。
金を払ってソープへ遊びに来たのに、マットの上で熟睡して、何もしないで帰ることがよくある。
裸になった麻美を無視して読書に耽ることもあれば、麻美の男性遍歴をずっと聞いていることもある。
とにかく変人だった。
だがその博識ぶりは驚異的で、勉強が得意でなかった麻美には、まるで百科事典が歩いているように思えた。
(今度また降矢木先生が店へ来た時に頼めばいいか・・)
麻美はソファに座ったまま、絵文字の入った封筒をテーブルの上に置いた。
不意に玄関のチャイムが鳴った。
「白クマ印の宅急便です」
「は~い」
麻美は軽くコンコンと頭を叩いて気持ちを切り替えると、サイドボードから印鑑を出して玄関へ向かった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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麻美は昭和五十年生まれだから、母が故郷へ戻って父親と再会するのもその頃だ。
ならば足立寛三という人物が、麻美の父親なのだろうか?
後生大事にしまっていた手紙。
だがそこまでは断じ切れない。
足立寛三なる人物が、大阪水商売時代の贔屓客である可能性も十分ある。
やはり鍵はこの絵文字だった。
漢字の成り立ちは絵文字だったと言われるが、それに似ていないこともない。
或いは何かの暗号であろうか。
仲間のことを喋れば殺されると母は言っていた。
それでこのような絵文字を通信手段に用いていたのか。
いずれにしても、この絵文字が麻美の父を知る唯一の手掛かりだった。
その解読を頼むため、麻美は降矢木の許へ立ち寄った。
だが焼餅焼きのアルバイト娘に邪魔されてしまったのだ。
降矢木は麻美の得意客である。
だが明らかに変な客でもあった。
金を払ってソープへ遊びに来たのに、マットの上で熟睡して、何もしないで帰ることがよくある。
裸になった麻美を無視して読書に耽ることもあれば、麻美の男性遍歴をずっと聞いていることもある。
とにかく変人だった。
だがその博識ぶりは驚異的で、勉強が得意でなかった麻美には、まるで百科事典が歩いているように思えた。
(今度また降矢木先生が店へ来た時に頼めばいいか・・)
麻美はソファに座ったまま、絵文字の入った封筒をテーブルの上に置いた。
不意に玄関のチャイムが鳴った。
「白クマ印の宅急便です」
「は~い」
麻美は軽くコンコンと頭を叩いて気持ちを切り替えると、サイドボードから印鑑を出して玄関へ向かった。
つづく…
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