『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十三)
『人外境の花嫁』
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四.黄昏時の掠奪者 (十三)
麻美はソファに身を埋めた。
「きっと父ちゃんは、お前を優しく迎えてくれるだろうよ」
母の声が蘇る。
母が今生きていれば六十五歳になる。
母が子供の頃、テキヤだった父と初めて出会ったと言う。
ならば父は母より十歳以上年上のはずだ。
血は水よりも濃い。
(父はまだ生きているかもしれない)
人生には必ず屈折点がある。
独りぼっちで生きてきた麻美は、三十年以上も放ったらかされた父親に初めて会ってみたいと思った。
だが父の住まいどころか、その名前もわからない。
麻美はサイドボードから、古めかしい一枚の封筒を取り出した。
幼い頃、母の遺物を片づけていた時に、偶然に三面鏡の引き出しから見つけたものだった。
表書きは、大阪の住所と母の名が日本語で書かれている。
裏には足立寛三とのみ記されていた。
消印は雨に滲んだのか、昭和四十八年としか読みとれなかった。
そして封筒の中に納まる便箋には、不思議な文字が描かれていた。
それは見たこともない絵文字だった。
これはおそらく足立寛三という人物から、大阪へ出稼ぎに出ていた母に宛てた手紙に違いない。
母はこの手紙を見て、大阪から山里へ戻ろうとしたのではないだろうか。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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麻美はソファに身を埋めた。
「きっと父ちゃんは、お前を優しく迎えてくれるだろうよ」
母の声が蘇る。
母が今生きていれば六十五歳になる。
母が子供の頃、テキヤだった父と初めて出会ったと言う。
ならば父は母より十歳以上年上のはずだ。
血は水よりも濃い。
(父はまだ生きているかもしれない)
人生には必ず屈折点がある。
独りぼっちで生きてきた麻美は、三十年以上も放ったらかされた父親に初めて会ってみたいと思った。
だが父の住まいどころか、その名前もわからない。
麻美はサイドボードから、古めかしい一枚の封筒を取り出した。
幼い頃、母の遺物を片づけていた時に、偶然に三面鏡の引き出しから見つけたものだった。
表書きは、大阪の住所と母の名が日本語で書かれている。
裏には足立寛三とのみ記されていた。
消印は雨に滲んだのか、昭和四十八年としか読みとれなかった。
そして封筒の中に納まる便箋には、不思議な文字が描かれていた。
それは見たこともない絵文字だった。
これはおそらく足立寛三という人物から、大阪へ出稼ぎに出ていた母に宛てた手紙に違いない。
母はこの手紙を見て、大阪から山里へ戻ろうとしたのではないだろうか。
つづく…
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