『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十二)
『人外境の花嫁』
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四.黄昏時の掠奪者 (十二)
麻美はバルコニーで頬杖をついたまま、小さくため息を漏らした。
(・・母ちゃん)
夕焼けは徐々に赤紫色へと移ろい、夜の帳が歓楽街に命を吹き込もうとしている。
母はそれから間もなく亡くなった。
心筋梗塞だった。
麻美が小学校から帰ると、母はシミーズ姿で三面鏡の前で倒れていた。
麻美は独りぼっちになった。
身寄り頼りのない麻美は、養護施設で心を開かない暗い青春を送った。
そして施設を出てからは、母と同じ水商売の世界へ身を投じたのだった。
麻美は呟いた。
(ずっと独りぼっちだった・・)
身寄りはない。
男達に熟女ソープ嬢とチヤホヤされるうちはいい。
だが麻美には、心から愛してくれる男性も、心の底から寄り添いたいと願う男性もいなかった。
無縁死。
日本では身元不明や生き倒れの死者が、年間三万二千人もいると言う。
行旅死亡人として処理される彼等は、その大半が飢餓死と凍死であるらしい。
他人事ではない。
あと数年もすれば、秋月のソープランドを辞める日が来る。
そこから麻美は何を頼りに生きるのか。
共白髪となるまで、麻美を愛してくれる伴侶は現れるのか。
(もう独りぼっちは嫌っ!)
麻美は再びため息をつくと、ネオンが煌めき始めた横浜の夜景を背に、独りぼっちの部屋へ戻って行った。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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麻美はバルコニーで頬杖をついたまま、小さくため息を漏らした。
(・・母ちゃん)
夕焼けは徐々に赤紫色へと移ろい、夜の帳が歓楽街に命を吹き込もうとしている。
母はそれから間もなく亡くなった。
心筋梗塞だった。
麻美が小学校から帰ると、母はシミーズ姿で三面鏡の前で倒れていた。
麻美は独りぼっちになった。
身寄り頼りのない麻美は、養護施設で心を開かない暗い青春を送った。
そして施設を出てからは、母と同じ水商売の世界へ身を投じたのだった。
麻美は呟いた。
(ずっと独りぼっちだった・・)
身寄りはない。
男達に熟女ソープ嬢とチヤホヤされるうちはいい。
だが麻美には、心から愛してくれる男性も、心の底から寄り添いたいと願う男性もいなかった。
無縁死。
日本では身元不明や生き倒れの死者が、年間三万二千人もいると言う。
行旅死亡人として処理される彼等は、その大半が飢餓死と凍死であるらしい。
他人事ではない。
あと数年もすれば、秋月のソープランドを辞める日が来る。
そこから麻美は何を頼りに生きるのか。
共白髪となるまで、麻美を愛してくれる伴侶は現れるのか。
(もう独りぼっちは嫌っ!)
麻美は再びため息をつくと、ネオンが煌めき始めた横浜の夜景を背に、独りぼっちの部屋へ戻って行った。
つづく…
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