『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(四)
『人外境の花嫁』
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四.黄昏時の掠奪者 (四)
日が西へ傾いている。
小高い野毛山のワンルーム・マンションから俯瞰する横浜の街は、夕焼けを浴びて懐かしいセピア色に染まっていた。
(横浜も変わっていく)
ドヤ街だった大岡川沿いにはビルが建ち並び、売春婦の巣窟だった京浜急行のガード下も、警察の徹底した摘発で往時の面影はすでになかった。
バルコニーに頬杖をついた麻美は、歓楽街を見下ろしてため息を漏らした。
十代の頃から水商売一筋で生きてきた。
銀座のクラブから始まり、赤坂、六本木のスナックやバーを転々として、三十歳の時、生まれ故郷の横浜へ流れ戻ってきた。
お決まりの転落人生。
夜の蝶に群がる男達は、狡賢いハイエナばかりだった。
いつの間にか麻美は身ぐるみ剥がされ、多額の借金を背負わされた。
困り果てた麻美は、秋月の店で体を切り売りして稼ぐしかなかった。
借金はやっとのことで完済したが、麻美は身も心も色街での暮らしにどっぷりと浸かっていた。
(私の居場所はここにしかない)
確かに女としてはどん底の仕事かもしれない。
世間は蔑んだ目で麻美を見るだろう。
だがこの体を求める男がいる限り、麻美はこの色街に住む権利が与えられるのだ。
(独りぼっちはもう厭・・)
母を早くに亡くした麻美は、養護施設で多感な年頃を過ごした。
騙されているとわかっても麻美が男に執着した理由は、二度と独りぼっちになりたくなかったからだった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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四.黄昏時の掠奪者 (四)
日が西へ傾いている。
小高い野毛山のワンルーム・マンションから俯瞰する横浜の街は、夕焼けを浴びて懐かしいセピア色に染まっていた。
(横浜も変わっていく)
ドヤ街だった大岡川沿いにはビルが建ち並び、売春婦の巣窟だった京浜急行のガード下も、警察の徹底した摘発で往時の面影はすでになかった。
バルコニーに頬杖をついた麻美は、歓楽街を見下ろしてため息を漏らした。
十代の頃から水商売一筋で生きてきた。
銀座のクラブから始まり、赤坂、六本木のスナックやバーを転々として、三十歳の時、生まれ故郷の横浜へ流れ戻ってきた。
お決まりの転落人生。
夜の蝶に群がる男達は、狡賢いハイエナばかりだった。
いつの間にか麻美は身ぐるみ剥がされ、多額の借金を背負わされた。
困り果てた麻美は、秋月の店で体を切り売りして稼ぐしかなかった。
借金はやっとのことで完済したが、麻美は身も心も色街での暮らしにどっぷりと浸かっていた。
(私の居場所はここにしかない)
確かに女としてはどん底の仕事かもしれない。
世間は蔑んだ目で麻美を見るだろう。
だがこの体を求める男がいる限り、麻美はこの色街に住む権利が与えられるのだ。
(独りぼっちはもう厭・・)
母を早くに亡くした麻美は、養護施設で多感な年頃を過ごした。
騙されているとわかっても麻美が男に執着した理由は、二度と独りぼっちになりたくなかったからだった。
つづく…
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