『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(六)
『人外境の花嫁』
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三.青楼街の偏執狂 (六)
畠山の顔から血の気が引いた。
胆力を頼りに血生臭い裏社会を生き抜いてきた男に、のほほんとしたサラリーマンが太刀打ちできるはずもない。
「せ、先生・・お助け・・」
正座した畠山は、降矢木に向かって蠅のように手を合わせた。
大袈裟な男だと呆れつつ、降矢木はうんざりした表情で尋ねた。
「畠山君、そもそも何故君はわざわざ東京から横浜まで出向いて来るんだね?」
「それは・・先生にお願いしている来月号の原稿を頂きに・・」
畠山は、官能小説誌『特選文芸』を発刊する立浪出版の編集者である。
薬局の経営者でありながら、降矢木は自作の官能小説を同誌に寄稿していた。
薬局経営者兼官能小説家。
すでに『特選文芸』とは二年ほどのつきあいになる。
決して売れっ子の官能小説家ではないが、マニアックな作風でコアなファンをつかんでいるらしい。
性格と同じで作品も気難しいのである。
『夫がいる樺子は、龍介にその熟れた肉体を預けた』
先月掲載された作品など、官能シーンはこの一行だけで、後は大正時代に生きた華族の娘、柳原白蓮の波乱万丈な人生を、性の観点から論文風に描いたものだった。
降矢木はよく語る。
性は人間行動の原点であると。
それが降矢木の研究テーマであり、官能小説を書き続けている理由らしい。
だが今となっては、社長業と官能小説家、どちらが降矢木の本業なのかもわからなくなっていた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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畠山の顔から血の気が引いた。
胆力を頼りに血生臭い裏社会を生き抜いてきた男に、のほほんとしたサラリーマンが太刀打ちできるはずもない。
「せ、先生・・お助け・・」
正座した畠山は、降矢木に向かって蠅のように手を合わせた。
大袈裟な男だと呆れつつ、降矢木はうんざりした表情で尋ねた。
「畠山君、そもそも何故君はわざわざ東京から横浜まで出向いて来るんだね?」
「それは・・先生にお願いしている来月号の原稿を頂きに・・」
畠山は、官能小説誌『特選文芸』を発刊する立浪出版の編集者である。
薬局の経営者でありながら、降矢木は自作の官能小説を同誌に寄稿していた。
薬局経営者兼官能小説家。
すでに『特選文芸』とは二年ほどのつきあいになる。
決して売れっ子の官能小説家ではないが、マニアックな作風でコアなファンをつかんでいるらしい。
性格と同じで作品も気難しいのである。
『夫がいる樺子は、龍介にその熟れた肉体を預けた』
先月掲載された作品など、官能シーンはこの一行だけで、後は大正時代に生きた華族の娘、柳原白蓮の波乱万丈な人生を、性の観点から論文風に描いたものだった。
降矢木はよく語る。
性は人間行動の原点であると。
それが降矢木の研究テーマであり、官能小説を書き続けている理由らしい。
だが今となっては、社長業と官能小説家、どちらが降矢木の本業なのかもわからなくなっていた。
つづく…
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