『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(四)
『人外境の花嫁』
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三.青楼街の偏執狂(四)
月絵は子供の頃から大人びた顔立ちをしていた。遠足の集合写真を見ても、一人だけ背が高く、つき添いの女教師のように見えた。
よくハーフに間違えられもした。
シャープな柳眉にくっきりと大きな瞳、そして高い鼻梁に締まった薄めの口唇が、端正な顔立ちに凛々しさを与えている。
「宝塚の男役みたい」
女子高時代には、学校のロッカーを開けると、バレンタインチョコが毎年溢れ落ちるほど詰め込まれていた。
男顔の大女――モデル並みの美貌を備えながら、月絵は容姿にコンプレックスを抱いて育った。
可愛らしいメイクを心がけているものの、意識しすぎて厚塗りになり、ニューハーフチックな顔になってしまうのだ。
畠山は神主さながらはたきを御幣に見立てると、祟り神を鎮めるように慌てて月絵をお払いした。
「月絵ちゃん、そんなに怒らないで」
「もう知りません。エロ編集者にセクハラされたって、パパに言いつけてやるんだから」
畠山はパパと言う言葉に震え上がった。
「つ、月絵ちゃん、この通りだ。お願いだからお父上だけには・・」
「ダメ、エロ美人だなんて、純真な乙女の心を踏みにじる男は許せない」
「ひえ~、許して月絵ちゃん。俺はまだ東京湾の底には沈みたくないよぉ」
月絵と逃げ惑う畠山の追い駆けっこで、客のいない静かな店は俄かに騒々しくなった。
するとレジ横のガラス戸が、荒々しくも軋みながら開いた。
「五月蝿いな、君達」
そこには、地味な上下ネズミ色のジャージを着た男が立っていた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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月絵は子供の頃から大人びた顔立ちをしていた。遠足の集合写真を見ても、一人だけ背が高く、つき添いの女教師のように見えた。
よくハーフに間違えられもした。
シャープな柳眉にくっきりと大きな瞳、そして高い鼻梁に締まった薄めの口唇が、端正な顔立ちに凛々しさを与えている。
「宝塚の男役みたい」
女子高時代には、学校のロッカーを開けると、バレンタインチョコが毎年溢れ落ちるほど詰め込まれていた。
男顔の大女――モデル並みの美貌を備えながら、月絵は容姿にコンプレックスを抱いて育った。
可愛らしいメイクを心がけているものの、意識しすぎて厚塗りになり、ニューハーフチックな顔になってしまうのだ。
畠山は神主さながらはたきを御幣に見立てると、祟り神を鎮めるように慌てて月絵をお払いした。
「月絵ちゃん、そんなに怒らないで」
「もう知りません。エロ編集者にセクハラされたって、パパに言いつけてやるんだから」
畠山はパパと言う言葉に震え上がった。
「つ、月絵ちゃん、この通りだ。お願いだからお父上だけには・・」
「ダメ、エロ美人だなんて、純真な乙女の心を踏みにじる男は許せない」
「ひえ~、許して月絵ちゃん。俺はまだ東京湾の底には沈みたくないよぉ」
月絵と逃げ惑う畠山の追い駆けっこで、客のいない静かな店は俄かに騒々しくなった。
するとレジ横のガラス戸が、荒々しくも軋みながら開いた。
「五月蝿いな、君達」
そこには、地味な上下ネズミ色のジャージを着た男が立っていた。
つづく…
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