『妻の娼婦像』 第四章
『妻の娼婦像』
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(四)
しかし新規大卒者の就職も儘ならないこのご時世に、四十歳過ぎのリストラされた男を雇ってくれる会社など滅多にない。
何か特殊な技術や技能を持っていれば別だが、何の資格もない敬一にとって、今までの収入を維持できる就職先など皆無に等しかった。
「あなたはいつも難しい難しいって言い訳するけど、翔太に学校を辞めさせるつもり?それともこの家を売り払うつもりなの?」
「……」
晶子はヒステリックな口調に、敬一は堪えるしかなかった。
家庭での給料運搬人の地位を失った敬一に、反論する権利はない。
「仕事、仕事って遅くまで残業して、土日も会社に出てばかりいたのに、どうしてあなたが馘にされなきゃいけないの?」
晶子の呆れた表情が、暗に敬一の無能さを皮肉っていた。
「運が悪かったんだよ」
敬一は苦々しい顔をした。
「運? ふーん、私も結婚運が悪かったのかしら。結婚する相手を間違えたみたい」
ついに晶子の決め台詞が出た。
リストラ以降、晶子は敬一を慰め励ますどころか、自分の結婚運の悪さばかり嘆いていた。
「大企業のエリートだった人が、まさかリストラされるとはね。私も若かったから、男を見る目がなかったのね」
晶子は半ば自嘲気味に笑った。
妻は三十二歳、敬一よりも十も若い。
1児の母となった今も、まだ独身で通用する若さを保っている。
しかもその肢体からは人妻の成熟した艶を発散させていた。
結婚して十年、妻は美貌を保つと同時に、若い頃のわがままさも残していた。
(若い妻を娶った報いか…)
敬一は晶子とは別の意味で、人生の運の悪さを噛みしめていた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る
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しかし新規大卒者の就職も儘ならないこのご時世に、四十歳過ぎのリストラされた男を雇ってくれる会社など滅多にない。
何か特殊な技術や技能を持っていれば別だが、何の資格もない敬一にとって、今までの収入を維持できる就職先など皆無に等しかった。
「あなたはいつも難しい難しいって言い訳するけど、翔太に学校を辞めさせるつもり?それともこの家を売り払うつもりなの?」
「……」
晶子はヒステリックな口調に、敬一は堪えるしかなかった。
家庭での給料運搬人の地位を失った敬一に、反論する権利はない。
「仕事、仕事って遅くまで残業して、土日も会社に出てばかりいたのに、どうしてあなたが馘にされなきゃいけないの?」
晶子の呆れた表情が、暗に敬一の無能さを皮肉っていた。
「運が悪かったんだよ」
敬一は苦々しい顔をした。
「運? ふーん、私も結婚運が悪かったのかしら。結婚する相手を間違えたみたい」
ついに晶子の決め台詞が出た。
リストラ以降、晶子は敬一を慰め励ますどころか、自分の結婚運の悪さばかり嘆いていた。
「大企業のエリートだった人が、まさかリストラされるとはね。私も若かったから、男を見る目がなかったのね」
晶子は半ば自嘲気味に笑った。
妻は三十二歳、敬一よりも十も若い。
1児の母となった今も、まだ独身で通用する若さを保っている。
しかもその肢体からは人妻の成熟した艶を発散させていた。
結婚して十年、妻は美貌を保つと同時に、若い頃のわがままさも残していた。
(若い妻を娶った報いか…)
敬一は晶子とは別の意味で、人生の運の悪さを噛みしめていた。
つづく…
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