『姦 計』 第八章
『姦 計』
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(八)
梅野は片倉に綾子を奪われた後、臨床検査会社に勤務する友紀と結婚した。
人間ドックなどで血液検査をよく行なうが、その解析設備を自前で持っている病院は少なく、大半は外注で検査会社が引き受けている。
友紀はその検査会社で検体の運搬を行なっており、どこかの病院で梅野が見初めたらしい。
片倉が友紀に初めて会ったのは結婚式の二次会だった。
はきはきとした勝気な性格と、男好きする肉感的な体が印象に残っている。
梅野を陥れるための身上調査で、妻の友紀が松村の病院に出入りしていることを知ったのだった。
松村は緊張を解きほぐすかのように、わざとおどけた素振りが聞いた。
「へえ、そんな人がうちの病院に出入りしているの。知らなかったな」
「半年前ぐらいから担当している。年は三十五で、なかなかの美人だよ」
「ふうん、でも人妻を口説くには、夫婦仲がいいか悪いかで違ってくるんだけど…」
「僕が知る限りでは離婚寸前だ」
情報収集に抜かりはなかった。
片倉の部下にも梅野と親しい人間はいる。
彼等からさりげなく聞き出したところでは、梅野は公私含めて毎晩のように飲み歩き、休日は決まってゴルフ三昧で、ほとんど家にいる時間がないという。
梅野自身も子供ができないのは、つくる行為をするほど妻と一緒にいないからだと広言しているらしい。
更に片倉の心を動かしたのは、梅野に愛人がいるという情報だった。
今年、学会の随行で梅野がアメリカへ出張した際、彼のパソコンに入る業務連絡の管理を部下に任せた。
その部下がこっそり漏らした話では、毎日のように友紀でない女性から、ラブ・メールが届いていたといいう。
また友紀についても、情報通の事務長から情報を得ていた。
友紀はそのグラマラスな肢体を武器に、何人かの若手のドクターと関係を持っているらしい。
片倉はその噂を信じた。若手ドクターと関係を持つのは、彼らに媚びへつらう製薬会社の夫に対する腹いせに違いない。
そんな状況を考えれば、梅野夫婦の関係はかなり悪いはずだ。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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梅野は片倉に綾子を奪われた後、臨床検査会社に勤務する友紀と結婚した。
人間ドックなどで血液検査をよく行なうが、その解析設備を自前で持っている病院は少なく、大半は外注で検査会社が引き受けている。
友紀はその検査会社で検体の運搬を行なっており、どこかの病院で梅野が見初めたらしい。
片倉が友紀に初めて会ったのは結婚式の二次会だった。
はきはきとした勝気な性格と、男好きする肉感的な体が印象に残っている。
梅野を陥れるための身上調査で、妻の友紀が松村の病院に出入りしていることを知ったのだった。
松村は緊張を解きほぐすかのように、わざとおどけた素振りが聞いた。
「へえ、そんな人がうちの病院に出入りしているの。知らなかったな」
「半年前ぐらいから担当している。年は三十五で、なかなかの美人だよ」
「ふうん、でも人妻を口説くには、夫婦仲がいいか悪いかで違ってくるんだけど…」
「僕が知る限りでは離婚寸前だ」
情報収集に抜かりはなかった。
片倉の部下にも梅野と親しい人間はいる。
彼等からさりげなく聞き出したところでは、梅野は公私含めて毎晩のように飲み歩き、休日は決まってゴルフ三昧で、ほとんど家にいる時間がないという。
梅野自身も子供ができないのは、つくる行為をするほど妻と一緒にいないからだと広言しているらしい。
更に片倉の心を動かしたのは、梅野に愛人がいるという情報だった。
今年、学会の随行で梅野がアメリカへ出張した際、彼のパソコンに入る業務連絡の管理を部下に任せた。
その部下がこっそり漏らした話では、毎日のように友紀でない女性から、ラブ・メールが届いていたといいう。
また友紀についても、情報通の事務長から情報を得ていた。
友紀はそのグラマラスな肢体を武器に、何人かの若手のドクターと関係を持っているらしい。
片倉はその噂を信じた。若手ドクターと関係を持つのは、彼らに媚びへつらう製薬会社の夫に対する腹いせに違いない。
そんな状況を考えれば、梅野夫婦の関係はかなり悪いはずだ。
つづく…
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