『姦 計』 第六章
『姦 計』
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(六)
再び寝室に静寂が戻った。
まだ綾子の温もりが残る白いシーツの乱れを、片倉は掌で圧しならした。
(夫への気遣いもない女め…。しかし綾子に勃起しないのは…)
お互いに愛情がないのは今に始まったことではない。
しかしこれまでは、その美しい肢体だけで綾子を抱くことができた。
片倉はその原因に薄々気づいていた。
(やはり梅野か…)
梅野との出世争いが最終局面を迎え、片倉の神経は昼も夜も過敏になっている。
それが綾子の体に、梅野の幻影を映しているのだ。
昔、綾子は梅野とつきあっていた。
当然、綾子の体は梅野に穢されているはずだ。
今までであれば、片倉は綾子を梅野から奪い取った優越感で抱けた。
しかしナーバスな今の片倉は、綾子が梅野の手垢がついた女と思うだけで、気が萎えてしまうのだ。
事実、綾子の妖花を舐めている間中、片倉の瞼にはニヤニヤと笑う憎たらしい梅野の顔が浮かんでいた。
片倉は握り締めた拳を付き出した。
(他に道はない)
支社長になれば、支店内の人事権を行使することができる。
そうなれば、ライバルである梅野を蹴落とすことができ、家庭生活で梅野の幻に悩まされることもなくなる。
だが逆に、梅野が支社長になってしまえば、片倉は左遷か閑職への封じ込めを強いられることになるだろう。
(梅野を潰すしか生き残る道はない。食うか食われるか、情けは無用だ。勝つためには手段を選ばない)
片倉には勝算があった。
梅野は豪胆な人間だ。
豪胆と言えば聞こえはいいが、裏を返せば緻密な管理能力がないことを意味している。
過去の歴史を見ても、豪傑と言われる人間は、決まって私生活がだらしない。
(あいつの弱点は握っている)
片倉はニヤリと笑った。
そして疲れた体と頭をフル回転させ、梅野を陥れる姦計を練り始めた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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再び寝室に静寂が戻った。
まだ綾子の温もりが残る白いシーツの乱れを、片倉は掌で圧しならした。
(夫への気遣いもない女め…。しかし綾子に勃起しないのは…)
お互いに愛情がないのは今に始まったことではない。
しかしこれまでは、その美しい肢体だけで綾子を抱くことができた。
片倉はその原因に薄々気づいていた。
(やはり梅野か…)
梅野との出世争いが最終局面を迎え、片倉の神経は昼も夜も過敏になっている。
それが綾子の体に、梅野の幻影を映しているのだ。
昔、綾子は梅野とつきあっていた。
当然、綾子の体は梅野に穢されているはずだ。
今までであれば、片倉は綾子を梅野から奪い取った優越感で抱けた。
しかしナーバスな今の片倉は、綾子が梅野の手垢がついた女と思うだけで、気が萎えてしまうのだ。
事実、綾子の妖花を舐めている間中、片倉の瞼にはニヤニヤと笑う憎たらしい梅野の顔が浮かんでいた。
片倉は握り締めた拳を付き出した。
(他に道はない)
支社長になれば、支店内の人事権を行使することができる。
そうなれば、ライバルである梅野を蹴落とすことができ、家庭生活で梅野の幻に悩まされることもなくなる。
だが逆に、梅野が支社長になってしまえば、片倉は左遷か閑職への封じ込めを強いられることになるだろう。
(梅野を潰すしか生き残る道はない。食うか食われるか、情けは無用だ。勝つためには手段を選ばない)
片倉には勝算があった。
梅野は豪胆な人間だ。
豪胆と言えば聞こえはいいが、裏を返せば緻密な管理能力がないことを意味している。
過去の歴史を見ても、豪傑と言われる人間は、決まって私生活がだらしない。
(あいつの弱点は握っている)
片倉はニヤリと笑った。
そして疲れた体と頭をフル回転させ、梅野を陥れる姦計を練り始めた。
つづく…
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