『姦 計』 第四章
『姦 計』
FC2 Blog Ranking
(四)
ライバル梅野を蹴落とした片倉だったが、戦利品の綾子を手にしてみると、深い失望と後悔が襲ってきた。
片倉が最初に直感した通り、綾子は妻とすべき女ではなかった。
確かに綾子は若く美しい。
片倉は今でもよく部下に、綾子を妻にしたことを羨ましがられる。
周囲から羨望の眼差しを浴びることは、片倉のプライドを満足させた。
綾子の美しさは、その意味でエリートの自分を飾り立てる宝飾品にも似ていた。
しかし実際の家庭生活は寒々としたものだった。
綾子は結婚しても相変わらず高価なブランド品を買い漁り、独身時代と変わらず、深夜まで友人たちと飲み歩いた。
時には夫をほったらかしにして、平気で海外旅行に出かけたりもした。
そして金がなくなれば、夫の薄給を嘆いて裕福な実家に泣きついた。
夫婦の性生活も同じだった。
いくら夫が仕事で疲れていても、自分が求める夜は満足いくまで奉仕させる。
逆に片倉がその気になっても綾子が疲れていたりすると、その肢体に指一本触れさせはしなかった。
しかし片倉は妻を叱らなかった。
もし叱れば、勝手気ままな綾子は、何の未練もなく家を出て行くに違いない。
エリートを標榜する片倉にとって、離婚は出世競争の致命傷になりかねない。
そればかりではない。
完璧主義者の片倉は、経緯はどうあれ、自分が決めた結婚の誤りを認めるのが堪えられなかった。
だから体裁を取り繕うために、あえて妻のわがままに甘んじなければならなかった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る
FC2 Blog Ranking
(四)
ライバル梅野を蹴落とした片倉だったが、戦利品の綾子を手にしてみると、深い失望と後悔が襲ってきた。
片倉が最初に直感した通り、綾子は妻とすべき女ではなかった。
確かに綾子は若く美しい。
片倉は今でもよく部下に、綾子を妻にしたことを羨ましがられる。
周囲から羨望の眼差しを浴びることは、片倉のプライドを満足させた。
綾子の美しさは、その意味でエリートの自分を飾り立てる宝飾品にも似ていた。
しかし実際の家庭生活は寒々としたものだった。
綾子は結婚しても相変わらず高価なブランド品を買い漁り、独身時代と変わらず、深夜まで友人たちと飲み歩いた。
時には夫をほったらかしにして、平気で海外旅行に出かけたりもした。
そして金がなくなれば、夫の薄給を嘆いて裕福な実家に泣きついた。
夫婦の性生活も同じだった。
いくら夫が仕事で疲れていても、自分が求める夜は満足いくまで奉仕させる。
逆に片倉がその気になっても綾子が疲れていたりすると、その肢体に指一本触れさせはしなかった。
しかし片倉は妻を叱らなかった。
もし叱れば、勝手気ままな綾子は、何の未練もなく家を出て行くに違いない。
エリートを標榜する片倉にとって、離婚は出世競争の致命傷になりかねない。
そればかりではない。
完璧主義者の片倉は、経緯はどうあれ、自分が決めた結婚の誤りを認めるのが堪えられなかった。
だから体裁を取り繕うために、あえて妻のわがままに甘んじなければならなかった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る