『闇に抱かれて』 第二章
『闇に抱かれて』
FC2 R18官能小説
(二)
澄み切った月の光が、深夜の住宅街に冷たく降りそそいでいる。
寝静まった家々と人通りのない舗道が、幽かに青白く浮かび上がって見える。
都築智彦は、フロントガラスに冴えた月を映しながら、ワンボックスカーを走らせていた。
普段と変わらない安全運転だが、口にくわえた煙草は忙しく火球が踊っている。
住宅街から幹線道路へ抜ける交差点で、智彦は車を停めて信号が変わるのを待った。
「ねえ、ちょっと寒いわ」
助手席の妻、美也子が言った。
「ああ、さすがに夜は冷えるな」
操作パネルに手を伸ばしてエアコンを付けた智彦は、横目でちらっと美也子を見た。
結婚して十二年。
飽きるほど長く夫婦を続けているが、意識して妻の顔を見るのは久しぶりだった。
出会った頃には幼く見えた童顔も、三十路の半ばに至って、遅咲きの色香を放ち始めている。
くりくりした円らな瞳とちょっと低めの鼻梁、そしてピンクのミニバラにも似た愛らしい口唇が、肩まで伸びた栗色の髪に映えている。
車はネオンが残る幹線道路へ滑り出した。
午前零時。外食チェーン店とコンビニばかりが、路上に店内の明かりを映している。
「あなた、コンビニ通り過ぎたわよ」
美也子が後ろを振り向きながら言った。
「…いいんだ、別に」
「いいんだって、コンビニへ煙草を買いに来たんでしょ?」
小学五年生になる息子の美彦が寝た後、智彦は煙草を買いに行くのにつきあえと、美也子を誘ったのだった。
「コンビニは逃げたりしないさ。明日は会社も休みだし、たまには夫婦で深夜のドライブとしゃれこむのもいいだろう?」
「若いカップルじゃあるまいし…変な人」
少しはにかんだ表情をして、美也子は首を傾けてクスクスと笑った。
満更でもない妻の態度に智彦は安堵した。
煙草を買うのは深夜のドライブに連れ出す口実に過ぎない。
智彦の胸中に秘めた真の目的は、この車の中で美也子に裸身を晒させることだった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
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(二)
澄み切った月の光が、深夜の住宅街に冷たく降りそそいでいる。
寝静まった家々と人通りのない舗道が、幽かに青白く浮かび上がって見える。
都築智彦は、フロントガラスに冴えた月を映しながら、ワンボックスカーを走らせていた。
普段と変わらない安全運転だが、口にくわえた煙草は忙しく火球が踊っている。
住宅街から幹線道路へ抜ける交差点で、智彦は車を停めて信号が変わるのを待った。
「ねえ、ちょっと寒いわ」
助手席の妻、美也子が言った。
「ああ、さすがに夜は冷えるな」
操作パネルに手を伸ばしてエアコンを付けた智彦は、横目でちらっと美也子を見た。
結婚して十二年。
飽きるほど長く夫婦を続けているが、意識して妻の顔を見るのは久しぶりだった。
出会った頃には幼く見えた童顔も、三十路の半ばに至って、遅咲きの色香を放ち始めている。
くりくりした円らな瞳とちょっと低めの鼻梁、そしてピンクのミニバラにも似た愛らしい口唇が、肩まで伸びた栗色の髪に映えている。
車はネオンが残る幹線道路へ滑り出した。
午前零時。外食チェーン店とコンビニばかりが、路上に店内の明かりを映している。
「あなた、コンビニ通り過ぎたわよ」
美也子が後ろを振り向きながら言った。
「…いいんだ、別に」
「いいんだって、コンビニへ煙草を買いに来たんでしょ?」
小学五年生になる息子の美彦が寝た後、智彦は煙草を買いに行くのにつきあえと、美也子を誘ったのだった。
「コンビニは逃げたりしないさ。明日は会社も休みだし、たまには夫婦で深夜のドライブとしゃれこむのもいいだろう?」
「若いカップルじゃあるまいし…変な人」
少しはにかんだ表情をして、美也子は首を傾けてクスクスと笑った。
満更でもない妻の態度に智彦は安堵した。
煙草を買うのは深夜のドライブに連れ出す口実に過ぎない。
智彦の胸中に秘めた真の目的は、この車の中で美也子に裸身を晒させることだった。
つづく…
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