『マネキン妻の懊悩』(十七)
『マネキン妻の懊悩』(十七)
「妄想の囲炉裏端」紅殻格子の呟き入口
FC2 R18官能小説
十七
上野仲町通り。
薄暮が細い路地裏にまで染み入る頃、至るところに林立した原色の看板が、赤やピンクの艶かしい輝きを放ち始める。
派手な出で立ちのキャバクラ嬢や、黒尽くめの呼び込み店員が、通りを行き交う男達の袖を引いていく。
早めの夕食を終えた美咲と山田は、車を駅前の駐車場に預けて、仲町通りの入り組んだ路地を歩いていた。
「上野にこんなところがあるなんて・・」
動物園とアメ横しか知らない美咲は、唖然として街並みを見回した。
着ているボディコンワンピが地味に思えるほど、狭い路地裏には、猥雑な風俗店がびっしりと密集していた。
「表があれば裏もある。それは街も人の心も同じだよ」
山田は美咲の細い腰に手を回して、スカートの裾を少し持ち上げた。
「いやん、見えちゃう・・」
今は下着をつけることを許されているので、後ろを歩いている人からは、ショーツが丸見えになっているに違いない。
だがこのディープな街では、例え下着姿で歩いても、誰にも見咎められそうもなかった。
山田は路地の奥にある古い雑居ビルへ足を踏み入れた。
そして突き当たりにある重厚な木製の扉を指差した。
『会員制パブ 猫目石』
見るからに妖しげな店の名を見て、美咲はぎゅっと山田の腕にしがみついた。
「ここからは、裏の、さらに裏の世界だ」
そう告げると、山田は扉をゆっくりと押し開けた。
扉の向こうには、仄暗いピンク色の照明が灯る妖しい空間が広がっていた。
「ママ、ご無沙汰」
「あら、柚木先生。お久しぶりだこと」
闇の向こうから年増らしい女の声がした。
普通のパブでないことは明らかだった。
靴を脱いでフロアに上がるのだ。
目が慣れるにつれて、おぼろげながら店の様子が見えてきた。
三十畳ほどの部屋には、カーペットが敷き詰められている。
その左半分は十席ほどのカウンターで、壁一面に酒のボトルが並べられている。
また右半分は、背もたれの高いソファでボックス席が四組つくられていた。
つづく…
『紅殻格子メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介
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薄暮が細い路地裏にまで染み入る頃、至るところに林立した原色の看板が、赤やピンクの艶かしい輝きを放ち始める。
派手な出で立ちのキャバクラ嬢や、黒尽くめの呼び込み店員が、通りを行き交う男達の袖を引いていく。
早めの夕食を終えた美咲と山田は、車を駅前の駐車場に預けて、仲町通りの入り組んだ路地を歩いていた。
「上野にこんなところがあるなんて・・」
動物園とアメ横しか知らない美咲は、唖然として街並みを見回した。
着ているボディコンワンピが地味に思えるほど、狭い路地裏には、猥雑な風俗店がびっしりと密集していた。
「表があれば裏もある。それは街も人の心も同じだよ」
山田は美咲の細い腰に手を回して、スカートの裾を少し持ち上げた。
「いやん、見えちゃう・・」
今は下着をつけることを許されているので、後ろを歩いている人からは、ショーツが丸見えになっているに違いない。
だがこのディープな街では、例え下着姿で歩いても、誰にも見咎められそうもなかった。
山田は路地の奥にある古い雑居ビルへ足を踏み入れた。
そして突き当たりにある重厚な木製の扉を指差した。
『会員制パブ 猫目石』
見るからに妖しげな店の名を見て、美咲はぎゅっと山田の腕にしがみついた。
「ここからは、裏の、さらに裏の世界だ」
そう告げると、山田は扉をゆっくりと押し開けた。
扉の向こうには、仄暗いピンク色の照明が灯る妖しい空間が広がっていた。
「ママ、ご無沙汰」
「あら、柚木先生。お久しぶりだこと」
闇の向こうから年増らしい女の声がした。
普通のパブでないことは明らかだった。
靴を脱いでフロアに上がるのだ。
目が慣れるにつれて、おぼろげながら店の様子が見えてきた。
三十畳ほどの部屋には、カーペットが敷き詰められている。
その左半分は十席ほどのカウンターで、壁一面に酒のボトルが並べられている。
また右半分は、背もたれの高いソファでボックス席が四組つくられていた。
つづく…
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