『マネキン妻の懊悩』(八)
『マネキン妻の懊悩』(八)
「妄想の囲炉裏端」紅殻格子の呟き入口
FC2 R18官能小説
八
美咲が交差点で信号待ちをしていると、道を挟んだ向こう側に男の姿を見つけた。
「山田課長!」
周囲の人が一斉に振り返るような大声で、酔っ払った美咲は山田に大きく手を振った。
一瞬ぎょっとした山田は、美咲の姿を認めると、一目散に交差点から逃げ出した。
「待って! 何で逃げるのよ」
信号が青に変わると、美咲は山田の後を追いかけた。
逃げる山田、追う美咲。
だが交差点を渡った歩道の段差で、美咲は足を引っ掛けて転んでしまった。
「痛っ!」
転んだ美咲を好奇な目が取り囲む。
転倒に気づいた山田が慌てて駆け戻ってきた。
山田は脱げたヒールを拾って躊躇いがちに美咲へ渡した。
「課長、どうして逃げたんですか?」
「い、いや・・別に逃げたわけじゃないよ」
「嘘。可愛い部下を置き去りにして、逃げようとしたじゃないですか!」
プウッとふくれっ面をした美咲は、酔いに任せて山田を大声で糾弾した。
「かなり酔っているみたいだな。ご主人も心配しているだろうから、早く帰った方がいいよ」
「まだ九時じゃないですか。私、子供じゃありません。それに主人は海外出張中で~す」
美咲はやんちゃ娘のように舌を出した。
山田は初めて接する泥酔した美咲に、分厚い眼鏡の奥にある目を白黒させた。
「昼間の淑やかな神倉君とは別人だね」
「これが本当の私です。そういう山田課長だって、堅物のくせにどうして銀座にいるんですか? 恐い奥様に叱られるんじゃありませんか?」
美咲は人目も憚らずゲラゲラと笑った。
「し、失礼な。僕だってたまには銀座へ飲みに来るさ」
「へえ、見かけによらず山田課長って遊び人なんですね。それなら私を見捨てようとした罰として、これから飲みに連れて行って下さい」
「ええっ・・いや、しかし・・」
つづく…
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「山田課長!」
周囲の人が一斉に振り返るような大声で、酔っ払った美咲は山田に大きく手を振った。
一瞬ぎょっとした山田は、美咲の姿を認めると、一目散に交差点から逃げ出した。
「待って! 何で逃げるのよ」
信号が青に変わると、美咲は山田の後を追いかけた。
逃げる山田、追う美咲。
だが交差点を渡った歩道の段差で、美咲は足を引っ掛けて転んでしまった。
「痛っ!」
転んだ美咲を好奇な目が取り囲む。
転倒に気づいた山田が慌てて駆け戻ってきた。
山田は脱げたヒールを拾って躊躇いがちに美咲へ渡した。
「課長、どうして逃げたんですか?」
「い、いや・・別に逃げたわけじゃないよ」
「嘘。可愛い部下を置き去りにして、逃げようとしたじゃないですか!」
プウッとふくれっ面をした美咲は、酔いに任せて山田を大声で糾弾した。
「かなり酔っているみたいだな。ご主人も心配しているだろうから、早く帰った方がいいよ」
「まだ九時じゃないですか。私、子供じゃありません。それに主人は海外出張中で~す」
美咲はやんちゃ娘のように舌を出した。
山田は初めて接する泥酔した美咲に、分厚い眼鏡の奥にある目を白黒させた。
「昼間の淑やかな神倉君とは別人だね」
「これが本当の私です。そういう山田課長だって、堅物のくせにどうして銀座にいるんですか? 恐い奥様に叱られるんじゃありませんか?」
美咲は人目も憚らずゲラゲラと笑った。
「し、失礼な。僕だってたまには銀座へ飲みに来るさ」
「へえ、見かけによらず山田課長って遊び人なんですね。それなら私を見捨てようとした罰として、これから飲みに連れて行って下さい」
「ええっ・・いや、しかし・・」
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