『女帝陥落の淫夜』(八)
『女帝陥落の淫夜』(八)
「妄想の囲炉裏端」紅殻格子の呟き入口
FC2 R18官能小説
六人の役員は、由紀夫が手塩にかけて育ててきた会社創成期からの生え抜きだった。
その恩義ある由紀夫から、東京進出の夢は耳にたこができるほど聞かされていた。
時期と方法に異論はあっても、由紀夫の夢を否定することはできないのだ。
そこを恵美は巧みに突いた。
東京進出に反対すれば、前社長に弓を引くことになるよう仕向けたのだ。
康平はお茶をすする立川に聞いた。
「この先、夢創社はどうなるんですか?」
「役員会で決議されたとは言え、投資案件の契約にはまだ時間がある。その間に何とか恵美社長を思い留まらせれば、会社の危機は免れることができる」
「なるほど」
「ところが恵美社長を思い留まらせる手段がない。どうしてあそこまであの投資案件にこだわっているのかなあ?」
「それは東京進出が由紀夫社長の夢だったからでは?」
「秋葉君、よく考えてみたまえ。東京へ出るだけなら、他にももっと安い物件があるじゃないか。それなのに社長は、コンサルタントの岡平が持ってきた五億円の物件ばかりに・・」
ふと立川は首を傾げた。
「岡平・・岡平・・まさか恵美社長が・・いや、でもあり得ないことではないな・・」
普段はただの五十過ぎのオヤジだが、考え込んだ時の立川には迫力がある。
「秋葉君、確か今日の夕方、恵美社長は岡平と会う約束をしているよな」
「ええ、投資物件の打ち合わせが入っています。私も社長と同行しますが・・」
「好都合だ。ちょっと耳を貸したまえ」
立川は周囲を確認してから康平に耳打ちした。
「え・・まさか・・そんな・・」
突拍子もない立川の話に、康平は思わず空の湯飲みを畳に落とした。
「可能性のひとつとして考えられることだ。座して死を待つよりはましだろう」
立川はそう言い切ると、途惑う康平の肩をポンポンと軽く叩いて笑って見せた。
つづく…
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そこを恵美は巧みに突いた。
東京進出に反対すれば、前社長に弓を引くことになるよう仕向けたのだ。
康平はお茶をすする立川に聞いた。
「この先、夢創社はどうなるんですか?」
「役員会で決議されたとは言え、投資案件の契約にはまだ時間がある。その間に何とか恵美社長を思い留まらせれば、会社の危機は免れることができる」
「なるほど」
「ところが恵美社長を思い留まらせる手段がない。どうしてあそこまであの投資案件にこだわっているのかなあ?」
「それは東京進出が由紀夫社長の夢だったからでは?」
「秋葉君、よく考えてみたまえ。東京へ出るだけなら、他にももっと安い物件があるじゃないか。それなのに社長は、コンサルタントの岡平が持ってきた五億円の物件ばかりに・・」
ふと立川は首を傾げた。
「岡平・・岡平・・まさか恵美社長が・・いや、でもあり得ないことではないな・・」
普段はただの五十過ぎのオヤジだが、考え込んだ時の立川には迫力がある。
「秋葉君、確か今日の夕方、恵美社長は岡平と会う約束をしているよな」
「ええ、投資物件の打ち合わせが入っています。私も社長と同行しますが・・」
「好都合だ。ちょっと耳を貸したまえ」
立川は周囲を確認してから康平に耳打ちした。
「え・・まさか・・そんな・・」
突拍子もない立川の話に、康平は思わず空の湯飲みを畳に落とした。
「可能性のひとつとして考えられることだ。座して死を待つよりはましだろう」
立川はそう言い切ると、途惑う康平の肩をポンポンと軽く叩いて笑って見せた。
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