心の闇⑤ 墓標(その5)…降矢木士朗
心の闇⑤ 墓標(その5) 降矢木士朗
翌朝、猛烈な二日酔いに苛まれながら、私は機嫌が悪い月絵を連れて散歩へ出かけました。
朝日が穏やかな海面を照らすW島には、昨夜の淫靡な雰囲気など微塵もありません。
昨夜通った海岸から入り組んだ路地を上ると、まだ娼婦達が眠るアパート群が見えてきました。
夜にはわかりませんでしたが、半ば廃墟と化した建物が多く目につきます。
おそらく娼婦達の数が減っているのでしょう。
今時、女性を求めてわざわざ辺鄙な島へ来る男などいないのかもしれません。
「夏草や 兵どもが 夢のあと」
紅街の寂れ果てた風景に、私は世の移ろいと儚さを感ぜずにはいられませんでした。
月絵は眼の下に隈をつくり、不貞腐れた顔で口をききません。
「いい加減、機嫌直したらどうだ?」
「別に・・」
女に恥を掻かせたことになるのでしょうか、寝たふりをしながら薄目で月絵の乳房はたっぷり拝ませてもらったのですが・・・
初心で一途な月絵です。
ならば尚更、夜の蝶が撒き散らす鱗粉にまみれた中年男が、純白で無垢な娘を穢すわけにはいかないのです。
しばらく山道を登ると、高台に並ぶ十数基の墓標に出くわしました。
「あら、お早い散歩ですね」
ぽつんと離れた苔生す墓標に手を合わせていた女性が、私達を見て声をかけてきました。
着物姿の美しい女性です。
「あ、昨日の仲居さん」
月絵に言われて私は胸につけたネームプレートに目を遣りました。
『××ホテル 高野雛子』
仲居より美人女将と言った風情の雛子は、暑くなってきた陽射しを避けて白い日傘を差しました。
つづく…
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朝日が穏やかな海面を照らすW島には、昨夜の淫靡な雰囲気など微塵もありません。
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夜にはわかりませんでしたが、半ば廃墟と化した建物が多く目につきます。
おそらく娼婦達の数が減っているのでしょう。
今時、女性を求めてわざわざ辺鄙な島へ来る男などいないのかもしれません。
「夏草や 兵どもが 夢のあと」
紅街の寂れ果てた風景に、私は世の移ろいと儚さを感ぜずにはいられませんでした。
月絵は眼の下に隈をつくり、不貞腐れた顔で口をききません。
「いい加減、機嫌直したらどうだ?」
「別に・・」
女に恥を掻かせたことになるのでしょうか、寝たふりをしながら薄目で月絵の乳房はたっぷり拝ませてもらったのですが・・・
初心で一途な月絵です。
ならば尚更、夜の蝶が撒き散らす鱗粉にまみれた中年男が、純白で無垢な娘を穢すわけにはいかないのです。
しばらく山道を登ると、高台に並ぶ十数基の墓標に出くわしました。
「あら、お早い散歩ですね」
ぽつんと離れた苔生す墓標に手を合わせていた女性が、私達を見て声をかけてきました。
着物姿の美しい女性です。
「あ、昨日の仲居さん」
月絵に言われて私は胸につけたネームプレートに目を遣りました。
『××ホテル 高野雛子』
仲居より美人女将と言った風情の雛子は、暑くなってきた陽射しを避けて白い日傘を差しました。
つづく…
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