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『人外境の花嫁」十. 暗黒の救済者(十一)

『人外境の花嫁』  

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十.暗黒の救済者 (十一) 

そこで降矢木は首を捻った。

「だから全てがインチキなんですよ。

世に広まる宗教もインチキなんですが、天神会はあなたの浅薄な知識を継ぎ接ぎにした世界観でしかないわけです。

歓喜天もそうなら、サンカに乱交の習性は報告されていません。

逆に他人の女に手を出せば、組織の厳しい報復が待っているのです。

本当のサンカは、その存在を世間から秘匿するために、厳重な掟を定めていたと考えられています」

「何が言いたい」

「ふふ、あなたはいろいろな舞台装置をつくってきましたが、最後まで人を信じることができなかったんじゃありませんか?」

「・・・・」

「後継者争いも同じで、そこにいる四人の中から誰も選べなかった。

それは愛弟子に甲乙つけがたかったのではなく、四人の誰一人として信用していなかったからです」

降矢木の言葉に、四人の最高幹部は股間の逸物を萎らせて乱裁を見つめた。

「実の娘である藤野麻美さんですら信じられないでいる」

乱裁は口許の髭をビクッと震わせたが、無言のまま降矢木に謎解きの続きを待った。

「それがこの四人による乱交劇の正体です」

降矢木はそう断言すると、麻美の陰部から流れ出す固まりかけた精液を指差した。

乱交によって女が妊娠した場合、その父親の確定は非常に難しい。

「乱裁さん、あなたはそれを逆手に取った」

つまり四人の男達が同時に麻美を犯せば、生まれて来る子供の父親である可能性は、四人の誰もが平等に持つことになる。

その子供を次の教祖だと指名すれば、我が子かもしれない四人の男は、否応なく天神会に忠誠を誓うことになると降矢木は看破した。

つづく… 

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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。

『人外境の花嫁」 十.暗黒の救済者(十二)

『人外境の花嫁』  


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十.暗黒の救済者 (十二)


降矢木は四人の男達を見回した。


「そのためには、生まれて来る後継者が誰の子かわかってはならないのです」


普通ならば最初の射精者になるために、我先にと乱交以前の争いが生じるはずである。


ところが儀式は粛々と行われた。


「おそらく四人が喧嘩にならないように、あなたは事前にゴードン・ギャラップ博士の実験結果でも密かに教えていたのでしょう」


男性器の亀頭が膨らんでいるのは、前に射精した男の精液を掻き出すために進化した。


90%もの残液を膣から取り除くことが可能であると言う。


一夫一婦制が確立する以前の原始乱交時代、子孫を残せたのは、必ずしも最初に交接した者ではなかったのだ。


「DNA鑑定が進歩した時代でも、子供の父親が誰だかは未だに不確実な問題なのです」


夫婦間の信頼を壊さないため、自分の子供をDNA鑑定することはない。


つまり子供の父親は男にとって永遠の疑惑なのである。


「子は鎹。四人が父親である可能性こそが教団分裂を救う奇策だったわけですね」
乱裁は微動だにせず、降矢木の推論を聞いている。


「結局、あなたは実の娘である藤野さんも、あなたの右腕だった四人の男も、ここにいる百人の幹部達も信用できなかったわけです」 


乱裁は天神会の秘密を守るため、乱裁は忠誠心ではなく、生物の性本能によって信者を支配しようとしていたのだ。


そしてまだ存在しない故に信用できる唯一の血縁者である孫へ、絶対王国となった天神会を譲ろうとしたのだ。


つづく… 


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『人外境の花嫁』 十.暗黒の救済者(十三)

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十.暗黒の救済者 (十三)

 大聖天堂にはしわぶき一つ聞こえない。

「このあたりが藤野さん拉致監禁の真相だと思いますよ。乱裁さん。まだわからないこともありますけどね。何故あなたは大麻と言う危険を冒してまで、ホームレスを救おうとしたかです」

「・・・・」 

乱裁はただ降矢木を見ているだけで何も語らない。

「確かに当時サンカは社会的弱者でした。山と里の境界で細々と生きてきたのに、昭和三十年代の高度経済成長によって、自由な漂泊者のサンカは絶滅させられた」

「・・・・」

「それはホームレスも同じでしょう。誰かが助けなければ、路傍に彼等の屍を放置される事態が起きます。今は行政が面倒を看ていますが、世の中が痩せ細って余力を失えば、ホームレスなど一溜まりもありません」


月絵は次々と繰り出される降矢木の洞察眼の凄まじさに舌を巻いた。

善は己のゆとりによって生まれる。

自分が生きるのに精一杯ならば、他人を慈しむ余裕など、イエス・キリストぐらいしか持ち得ないだろう。

ヒステリックになった大衆が、真っ先に弱者を攻撃するのは歴史の習いである。

「天神会をつくった原点は教えてくれないでしょうね。それは乱裁さん、あなたの心の問題ですから強要しませんけどね」

降矢木はふっとため息をついた。

「おそらくは・・香具師だったあなたが、この九州で出逢った藤野さんのお母さんへの想いだったのではありませんか・・心優しい弱者への慈悲だったんでしょうね」

乱裁は表情を変えず、遠く大聖天堂の天井を見上げている。

「愛していた奥様を亡くされ、その娘さえも平和な暮らしを壊した者共の苦界から助けることも出来ない。それが天神会をつくった原典だったと思いたい」

初めて憤怒の表情に変じた降矢木は、大聖天堂をぐるりと指差して語気を荒げた。

「その志は尊いが、結局あなたが辿り着いたのは、平地人と変わらぬ欲望の世界に他ならないではないですか!」

そう言い切った降矢木は、すっかり満足したのか、みるみる萎んでいつもの頼りない姿に戻ってしまった。
 
つづく… 


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『人外境の花嫁』 十.暗黒の救済者(十四)

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十.暗黒の救済者 (十四)
 
真相を吐き出した降矢木は、天台宗の厄除である角大師のように痩せ細って骨皮筋右衛門になっていた。

「それはさておき、私はそろそろ帰らなければなりません。そもそも書きかけの原稿があるのに、こんな山奥まで来なければならなかったのは、あそこにいる馬鹿二人のせいなんですよ」

そう言うと、降矢木は惨めに戒められた月絵と畠山を指差した。

猿轡で声が出せない月絵は、大きく首を振って呻くことしかできなかった。

(先生、ごめんなさい。もう二度と先生に逆らいません。お願い、助けて下さい)

込み上げてくる感情の高まりに、月絵は半狂乱の態で上半身をくねらせた。

それは犬が飼い主に激しく尻尾を振って喜ぶ姿に似ていた。

犬と違うところは、尻尾でなく、乳房を上下左右に揺さぶっているところだろう。

降矢木はじっと月絵の胸元を見つめた。

「ふ~ん、まあ、なかなか立派なオッパイであることは認めるけどね・・」

テレッと相好を崩した降矢木を見て、月絵はポッと顔が熱くなるのを感じた。

生死に係わる局面ではあるが、月絵は乳房を降矢木に晒していることに初めて気づいたのだ。

(も、もう・・先生ったらこんな時に・・)

恥ずかしさはあったが、乳房を褒められて月絵の女心は疼いた。

コホンと咳払いすると、降矢木は再び乱裁と対峙した。

「私の望みは二人を無事解放して貰うことだけです。あなた方を世間に公表して糾弾するつもりはありません」

降矢木の提案は、二人を人吉警察署の前で解放すると同時に、大麻畑の画像を撮った携帯を天神会側に引き渡すと言うものだった。

「・・良かろう」

乱裁はしばらく考えて、降矢木の交換条件を呑んだ。

「二人の戒めを解いてやれ」

菜穂と子猿は不服そうな顔で、乱裁の命令に従って月絵と畠山の拘束を解いた。

つづく… 


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『人外境の花嫁』 十.暗黒の救済者(十五)

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十.暗黒の救済者 (十五)

全身が軽くなった。

「先生っ!」

猿轡と後ろ手縛りから解放された月絵は、止めどなく流れる涙を拭おうともせず、全力疾走で降矢木の許へ向かった。

(抱きしめて欲しい)

その一心で、月絵は足がもつれそうになりながら走った。

大聖天堂は、中央にある祭壇が低い擂り鉢状で、乱裁の近くにいる降矢木へ走る月絵の体は、厭でも下り坂で加速度がつく。

「先生、ごめんなさいっ!」

大声をあげて、一メートル先にいる降矢木の胸に抱きつこうとした時、足が踏み出せずふわっと体が前のめりに浮くのを感じた。

時間が止まった。

コマ送りで宙を飛ぶ月絵の体が、慌てて逃げようとする降矢木の背中にぶつかった。

「うわっ、馬鹿者!」

月絵が体当たりした反動で、降矢木はフロアにもんどりうって倒れた。

その瞬間、命綱の携帯が、降矢木の手を離れて天神会幹部の足許に転がった。

するとその幹部は、反射的に携帯を力一杯踵で踏みつけた。

「・・・・」

大聖天堂が凍りついた。

降矢木と月絵、そして畠山は、表情を強張らせたまま、その場にへたり込んだ。

「せ、先生・・」

恐る恐る顔色を窺う月絵に、降矢木はただ「はあ・・」と大きなため息をついた。

つづく…

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紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

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ご挨拶
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日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
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