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『捨 て 犬』 第十一章

『捨 て 犬』

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(十一 )

医師として、経営者として、男勝りな気丈さで世を渡る英子は、日々相当なプレッシャーを背負って暮らしているに違いない。
患者は勿論、いつも周囲から頼られるばかりで、心が休まるゆとりもないだろう。

しかも英子には頼って甘えられる相手がおらず、ストレスのはけ口はヒステリー以外にないのかもしれない。
おんぶに抱っこの年若いヒモ亭主では、疲れ果てた心を癒すどころか、英子のストレスを増やすだけなのだろう。

(無理をしていたのか)

梅原は英子を哀れに思った。
MRたちにかじずかれる女傑も、一皮剥けばどこにでもいる弱い女なのだ。
世の中のしがらみを忘れて、強い男の胸で甘えたい夜もあるだろう。

英子は泣きはらした目で、人見知りする童女のように梅原を見上げた。

「あなたが欲しかったの…」

そう小さく呟いた英子は、飼い主の膝の上で戯れる子猫のように、梅原の胸に体をすり寄せてきた。

「いや、俺は強い男では…」

梅原は英子の勘違いを正そうとした。 
あの雪の日に平手打ちしたのは、感情が抑えきれなかっただけだ。
女に暴力を振るうのは、それこそ弱い男の証だ。

「ううん、こんな私を叱ってくれる人は、あなたしかいないわ…」

英子はしおらしく顔を胸に埋めた。 
梅原はその少女のような仕草を見て、いとおしさで胸が熱くなるのを覚えた。

誰も頼れない英子。
そして誰からも頼られない梅原。

考えてみれば二人とも、孤独の影に怯える似た者同士ではないか。
今宵一夜だけ、お互いの傷口を舐め合って、痛みを忘れてしまうのも悪くない。
梅原は英子を仰向けに横たえると、ゆっくりとバスローブの紐を解き始めた。

つづく…

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『捨 て 犬』 第十二章

『捨 て 犬』

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(十二 )

英子はじっとなすがままにされている。
時折、英子の肌が掌に触れた。

張りつめた若い娘の肌が滑るような絹の手触りならば、熟女の肌にはビロードの優しく包み込むような柔らかさがあった。 

やがてショーツとお揃いの、ブルーのブラジャーが現れた。
その内側には、今にも零れそうな乳房がふるふると震えている。

梅原は英子に覆い被さると、ブラジャーのホックを外した。
子供を産んでいない三十八歳の乳房は、はちきれんばかりの張りこそないが、息を吹きかけただけでたわむほど柔らかそうだった。

梅原は荒々しく両掌で二つの肉隆を寄せ集め、頂点でふるふると揺れる小さな突起を交互に口に含んだ。

「あ…あん…」

梅原が口唇で乳首を軽く吸うたび、英子は微かな歓喜な声を漏らして顔を左右に打ち振った。
瞳を閉じて口唇を僅かに開いたその横顔は、体の芯から湧き上がる悦楽に歪んではいたが、どこか安心しきった幸せな表情にも見えた。

梅原は片手で乳首を弄びながら、もう一方の手をゆっくりと下腹部へ這わせていった。
若い女ほどくびれはないが、ほどよく脂肪の乗った柔らかな肌が、ねっとりと掌にまとわりついてくる。

「いい肌触りだ」

「い、いや…恥ずかしい」

思わず口に出てしまった梅原からの感嘆に、英子は両手で顔を隠した。

「白衣の怖い先生からは想像できない女らしい体だよ」

「ああん…いじわる言わないで」

恥じらいに身をよじる英子から、小さなショーツを剥ぎ取った。
その布切れの大切な部分には、すでに不思議な形の染みができていた。

「ほら、もうこんなに濡れている」

「もう、バカ、バカ」

英子は両手で顔を隠したまま、首を小さく振った。

梅原はむちむちした白い太腿を撫ぜ、少しずつ固く閉じた両脚を開いていった。
深い草叢に覆われた英子の秘所が、徐々に梅原の目に鮮明な形を現してくる。

「あん、見ないで」

三十八歳の熟女が、処女のような恥じらいを見せて身悶えた。
梅原は草叢の奥に息づくクレパスを、すっと中指の先で撫で上げた。

「はうう…」

英子は全身を震わせて大きく喘いだ。
熱く火照った肉芯をなぞった指先は、糸を引くぐらい濃厚な淫液で濡れていた。

つづく…

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『捨 て 犬』 第十三章

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(十三 )

梅原は英子の反応に満足すると、着ている服を脱ぎ捨てた。
そして英子と逆方向に寝そべり、すでに猛々しく勃起した肉茎を顔の前に差し出した。

「さあ、先生」

英子は恐る恐るその脈打つものに触れた。

「ああ、すごい」

その英子の驚嘆が、肉体の衰えを気にする梅原を励ました。
うっとりと瞳を伏せた英子は、ゆっくりとその先端から口に含んでいった。
たどたどしい舌使いだが、逆に梅原はその初々しさに興奮した。

梅原は英子に口で奉仕させながら、草叢に隠れた秘芯が露になるように、再び両脚を持ち上げるようにして開いた。
目の前に光沢のある鮮やかな紅色の花が咲いた。

「うう…」

英子は口を塞がれ、くぐもった声でうめいた。
蜜液はすでに花芯から溢れ、花弁や周囲の草叢までおびただしく濡らしている。

「もっと可愛がってやるぞ」

梅原は指先を熱い蜜壺に滑り込ませ、舌先で固くなった小さな突起を弄んだ。
英子の体が梅原を跳ね上げるほど仰け反った。

「あうっ、ダメ」

肉茎をくわえていられなくなった英子は、狂ったように頭を左右に振った。
髪が乱れ、乳房が波打つほど呼吸を荒げている。

梅原は英子の乱れる様を楽しみながら、体を移してその両脚の間に座り、肉茎の先で花芯の周囲を撫でるように弄んだ。

「先生、もう我慢できないだろう?」

つづく…

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『捨 て 犬』 第十四章

『捨 て 犬』

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(十四 )

顔を真っ赤に上気させ、息も絶え絶えの英子は、縋るように梅原の腕を何度も引いた。

「も、もうダメ…お願い…入れて…あなたの女にして!」

梅原は濡れた蜜壺に肉茎を宛がった。
我慢できない英子は、腰を動かし自分からそれをくわえこんだ。

「ああっ」

英子は大きく喘ぐと、梅原にしがみついてきた。
その蜜壺は蕩けるほど熱く、軟らかい淫肉がじわじわと梅原を包み込んでいく。

「気持ちいい…こんなの初めて…」

梅原は走り出す汽車のように、徐々に肉茎を突くリズムを速めた。
熟女の淫肉の濃厚な粘着感が心地よい。
英子もその動きに合わせて腰を振り、絶頂に登りつめていく。

「好きにして、私を好きにして…」

英子はうわ言を繰り返し、豊かな乳房を上下にゆさゆさと揺らした。
熟女らしい獰猛なまでの激しさに、梅原も一層征服欲を掻き立てられていく。

「どうだ、気持ちいいか」

「ああ、も、もうたまらないの、だめ、いっちゃう、いっちゃう…」

英子は全身を硬直させて絶頂を迎えた。
梅原もべっとりと蜜液が滴る肉茎を抜くと、真っ白い下腹部の上に射精した。

部屋には荒い息遣いだけが残った。

気を失っている英子の頬を撫でてみた。
憑き物が落ちたように、安らかな表情をしている。

梅原は性欲を満たしたことよりも、その英子の寝顔に満足感を覚えた。

つづく…

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『捨 て 犬』 最終章

『捨 て 犬』

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(十五 )

午前中の診察を終えた富岡クリニックは、まだ十人以上の患者たちが、待合室で薬と会計を待っていた。
見覚えのある髪の薄い丸顔の男が、つかつかと事務室に入ってきた。

「失礼します。新大阪製薬の早坂です。先生はお手隙でしょうか?」

「おう、早さん」

机で帳簿をつけていた梅原は、立ち上がって早坂を手招きした。

「梅さん、ずいぶん事務長姿が板についてきたな」

梅原は白衣を指差して大笑いすると、早坂は販促品のボックス・ティッシュを机の上に五つも積み上げた。

梅原は新東京製薬を退職した後、富岡クリニックで事務長として働いている。

ホテルでの夜、英子を抱いた後、
「仕事でも私を支えて下さい」
と、泣いてせがまれたからだった。

英子は、富岡クリニックをベッド数五十ほどの病院にする計画を持っていた。
病院を設立するとなれば、建設業者や銀行との交渉、看護婦や栄養士の労務管理等、とても医療の片手間ではできない仕事が増える。
その夢の実現のために、信頼できるパートナーが欲しかったのだ。

英子は正直に謝った。
あの雪の日に退職させるよう支店長に連絡したのも、シンポジウムの後、ホテルの部屋に招いたのも、全ては梅原をパートナーとして引き抜くための計画だったのだ。

(この人が欲しい)

頬を叩かれた時、英子はそう直感したと言う。
ホテルでは緊張のあまり高飛車な態度をとったが、バスローブで迎えたのは、梅原に抱かれるのを心待ちにしていたからだった。

考えようによっては、体を餌にしたと勘ぐられても仕方ないが、梅原は悪い気がしなかった。
プライドの高い英子が、体を差し出してまで梅原を頼ってきたのだ。

たとえ一人の女でも、そこまでされれば男冥利に尽きるというものだ。
診察を終えた英子が事務室に入ってきた。

「あら、早坂さん」

「先生、お世話になっています。今、少しお時間戴けますか?」

目ざとい早坂は英子の隣に瞬間移動した。

「ごめんなさいね。今日はこれから建設会社との打ち合わせで、梅原さんと外出しなければならないの」

英子は明るくなった。
気持ちにゆとりができたのか、MRに対しても穏やかに接するようになっていた。

「じゃあ、梅原さん。先に車で待っていますから」

英子はそう言うと、早坂に頭を下げて事務所を出て行った。
梅原も白衣を脱いで、外出する準備を始めた。
背後で、薬剤師と事務員のクスクス笑う声が聞こえた。

「先生はいつも、梅原さん、梅原さん、ばかりよね。まるで恋人同士みたい」

梅原は聞こえないふりをした。

建設業者と昼食を取りながら打ち合わせするのは本当だった。
だがその後、午後の診察が始まる三時まで、梅原と英子は近くのラブホテルで二人だけの時間を過ごす。
それが日課になっていた。

(仕方ない…公私共に頼られたら)

そうニヒルに呟きながらも梅原は、捨て犬を拾ってくれた飼い主の体を、今日はどうやって喜ばせてやろうかと思い巡らせていた。

―閉幕―

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
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臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
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