『不如帰』・・・第六章
『不 如 帰』 (永遠の嘘)
長年に亘り妻を苦しめてきた夫の裏切り行為に対し、
執念の復讐が実行に移される時がきた。
だが妻の復讐心を覆す衝撃の真実が今、明かされる。
第六章
建てつけが悪いのか、目を凝らすと磨硝子と窓枠の間に細い隙間がある。
(覗かれていた?)
風呂場の外は山の斜面に通じる暗闇で、例え覗かれていたとしても、明るい風呂からは全く人影すら見えない。
(一体誰が・・)
答えは自ずと決まっていた。
克哉は会津若松の温泉で愛人を抱いている。この家にいるのは義兄の武彦だけだった。
思い当たる節はあった。
無口で無表情、何を考えているかわからない武彦だが、佳珠子を見る目に、体の隅々まで覗かれているような好色さを感じることがあった。
考えてみれば、老人ばかりの過疎集落で、生身の若い女などめったに目にすることはない。
男盛りで独り身の武彦にすれば、義妹とは言え、淫欲を抱くのは無理からぬことなのかもしれない。
佳珠子は湯船に裸身を沈めると、両腕を胸で交差させて乳房を覆った。
(いやらしい・・)
そう軽蔑しながらも、克哉が満たしてくれない佳珠子の女が疼いた。
かつて男達をひれ伏せさせた女のプライドが、再び佳珠子の体の奥で蠢き始めていた。
瞳を閉じた佳珠子は夢想した。
獲物を狙う獣のような武彦の目が、幾十幾百と増殖して佳珠子の裸身を覗いている。
邪な淫欲の視線が、真っ白い乳房やヒップ、淡い秘毛に隠された陰部を執拗に舐め回す。
(・・ああ)
下腹部の奥が疼くのを佳珠子は感じた。
そっと陰部へ指を滑らせてみた。
そこは熱い淫蜜がねっとりと絡みついていた。
好色な眼で蹂躙された佳珠子の体は、あろうことか武彦を迎え入れようと潤っているのだった。
子宮の疼きは佳珠子の理性を昏睡させた。
(ふしだらな女と蔑むなら、ふしだらな女に相応しい復讐をしてあげるわ)
佳珠子の邪悪な妄想は、どす黒い血の色を帯びて膨張していった。
(そう、さっき鳴いた不如帰のように・・)
婚約してこの集落を訪れた時、夜克哉と山道を歩いていて、やはり不如帰が鳴くのを聞いたことがあった。
克哉は都会育ちの佳珠子に不如帰の話をしてくれた。
托卵と言って、不如帰はウグイスやホオジロの巣に卵を産みつけ、ヒナを育てさせる習性がある。
孵化の早い不如帰のヒナは、親鳥の卵を全て巣の外へ放り出し、自分だけを育てさせるのだと言う。
不如帰は残酷な鳥だと佳珠子が憤ると、自分の卵を見分けられない鳥が愚かなのだと克哉は笑った。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
応援よろしくお願いいたします
『紅殻格子メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲) FC2官能小説 人気ブログランキング~愛と性~
長年に亘り妻を苦しめてきた夫の裏切り行為に対し、
執念の復讐が実行に移される時がきた。
だが妻の復讐心を覆す衝撃の真実が今、明かされる。
第六章
建てつけが悪いのか、目を凝らすと磨硝子と窓枠の間に細い隙間がある。
(覗かれていた?)
風呂場の外は山の斜面に通じる暗闇で、例え覗かれていたとしても、明るい風呂からは全く人影すら見えない。
(一体誰が・・)
答えは自ずと決まっていた。
克哉は会津若松の温泉で愛人を抱いている。この家にいるのは義兄の武彦だけだった。
思い当たる節はあった。
無口で無表情、何を考えているかわからない武彦だが、佳珠子を見る目に、体の隅々まで覗かれているような好色さを感じることがあった。
考えてみれば、老人ばかりの過疎集落で、生身の若い女などめったに目にすることはない。
男盛りで独り身の武彦にすれば、義妹とは言え、淫欲を抱くのは無理からぬことなのかもしれない。
佳珠子は湯船に裸身を沈めると、両腕を胸で交差させて乳房を覆った。
(いやらしい・・)
そう軽蔑しながらも、克哉が満たしてくれない佳珠子の女が疼いた。
かつて男達をひれ伏せさせた女のプライドが、再び佳珠子の体の奥で蠢き始めていた。
瞳を閉じた佳珠子は夢想した。
獲物を狙う獣のような武彦の目が、幾十幾百と増殖して佳珠子の裸身を覗いている。
邪な淫欲の視線が、真っ白い乳房やヒップ、淡い秘毛に隠された陰部を執拗に舐め回す。
(・・ああ)
下腹部の奥が疼くのを佳珠子は感じた。
そっと陰部へ指を滑らせてみた。
そこは熱い淫蜜がねっとりと絡みついていた。
好色な眼で蹂躙された佳珠子の体は、あろうことか武彦を迎え入れようと潤っているのだった。
子宮の疼きは佳珠子の理性を昏睡させた。
(ふしだらな女と蔑むなら、ふしだらな女に相応しい復讐をしてあげるわ)
佳珠子の邪悪な妄想は、どす黒い血の色を帯びて膨張していった。
(そう、さっき鳴いた不如帰のように・・)
婚約してこの集落を訪れた時、夜克哉と山道を歩いていて、やはり不如帰が鳴くのを聞いたことがあった。
克哉は都会育ちの佳珠子に不如帰の話をしてくれた。
托卵と言って、不如帰はウグイスやホオジロの巣に卵を産みつけ、ヒナを育てさせる習性がある。
孵化の早い不如帰のヒナは、親鳥の卵を全て巣の外へ放り出し、自分だけを育てさせるのだと言う。
不如帰は残酷な鳥だと佳珠子が憤ると、自分の卵を見分けられない鳥が愚かなのだと克哉は笑った。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
応援よろしくお願いいたします
『紅殻格子メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲) FC2官能小説 人気ブログランキング~愛と性~