『遠距離夫婦』・・・第九章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第九章
松戸市に入った。
和久は甘ったるい回想に浸りながら、国道6号線から外れて静かな新興住宅街へと車を走らせた。
松戸駅からバスで十分以上かかるこの住宅地に、一昨年、和久はローンを組んで家を買った。
猫の額ほどの庭しかない三十八坪の小さな家だ。
コニファーの鉢植えが置かれた玄関を開けて家に入ると、妻の清美がパジャマ姿で出迎えた。
「お帰りなさい」
どこか冷たい口調が不愉快に聞こえる。
清美の出迎えを無視して、和久はスーツからパジャマへ着替え始めた。
清美は三十六歳、専業主婦である。
十五年前、和久が千葉営業所にいた頃、同じ職場で清美は事務職として働いていた。
当時清美は商業高校を卒業して三年、まだ初々しい二十一歳だった。
二人は自然と恋に落ちた。
そして社内結婚したのを境に、清美は会社を辞めて家庭に入ったのだった。
着替えを終えた和久は、リビングのソファにふんぞり返り、お茶を運んできた清美へつっけんどんに言った。
「四月から会津若松へ転勤だ」
そうでなくとも冷え切った家庭が完全に凍りついた。
「あ、会津へ、転勤・・?」
いつもは冷静で感情を表に出さない清美だが、さすがに動揺を隠せず、黒目が落ち着きなく揺れている。
和久は妻の気持ちを察して冷笑を口許に浮かべた。
「お前の心の中はわかっているよ。単身赴任で会津へ行けと言うのだろう?」
「・・そうしてもらうしかないわ」
「ふん、お前は俺がいなくなった方が嬉しいんだろう?」
「そ、そんな・・仕方ないでしょう、洋和がいるんだから」
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
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松戸市に入った。
和久は甘ったるい回想に浸りながら、国道6号線から外れて静かな新興住宅街へと車を走らせた。
松戸駅からバスで十分以上かかるこの住宅地に、一昨年、和久はローンを組んで家を買った。
猫の額ほどの庭しかない三十八坪の小さな家だ。
コニファーの鉢植えが置かれた玄関を開けて家に入ると、妻の清美がパジャマ姿で出迎えた。
「お帰りなさい」
どこか冷たい口調が不愉快に聞こえる。
清美の出迎えを無視して、和久はスーツからパジャマへ着替え始めた。
清美は三十六歳、専業主婦である。
十五年前、和久が千葉営業所にいた頃、同じ職場で清美は事務職として働いていた。
当時清美は商業高校を卒業して三年、まだ初々しい二十一歳だった。
二人は自然と恋に落ちた。
そして社内結婚したのを境に、清美は会社を辞めて家庭に入ったのだった。
着替えを終えた和久は、リビングのソファにふんぞり返り、お茶を運んできた清美へつっけんどんに言った。
「四月から会津若松へ転勤だ」
そうでなくとも冷え切った家庭が完全に凍りついた。
「あ、会津へ、転勤・・?」
いつもは冷静で感情を表に出さない清美だが、さすがに動揺を隠せず、黒目が落ち着きなく揺れている。
和久は妻の気持ちを察して冷笑を口許に浮かべた。
「お前の心の中はわかっているよ。単身赴任で会津へ行けと言うのだろう?」
「・・そうしてもらうしかないわ」
「ふん、お前は俺がいなくなった方が嬉しいんだろう?」
「そ、そんな・・仕方ないでしょう、洋和がいるんだから」
つづく・・・
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