『愛憎の流砂』 第一章
『愛憎の流砂』
※ 男の愛撫にうねる白い肌・・・
愛人に溺れる母を恨み呪う少女・・・
やがて大人になった少女は、思いもよらぬ運命に手繰られていく。
第一章
昭和三十九年、冬。
東京オリンピックが開催されたこの年は、新幹線やモノレールの開通、高層ホテルの建設ラッシュと、日本中が高度経
済成長に沸き立っていた。
近代都市へと変貌する首都東京。
だが時代の流れとは無縁に、ここ隣県の千葉には、太古から変わらぬ茫漠たる光景が広がっていた。
九十九里浜。
砂と海で造られた壮大なオブジェ。
果てしない荒野にも似た砂浜と、空との境に緩やかな弧を描く太平洋が、せめぎあって汀に巨大な刃紋をつくっている。
沖合まで遠浅が続く海は、人の背丈ほどある波頭を幾重にも繰り出す。
その切れ間のない荒波の轟音は、吹き荒ぶ強風とあいまって、無辺の大地を揺るがすように響き渡っている。
イワシ漁を終えた漁船が帰ってきた。
浜で待っていた二十人ばかりの女が、寒中にも拘らず、波の高い海へ入って船を浜へ押し始めた。
漂砂が堆積する砂浜に漁港を造るのは難しい。
河川や潟湖がある地域を除いて、今も九十九里浜には漁港がなかった。
江戸の昔から、漁師達は重い船を砂浜に揚げ降ろししてきた。
しかも近年は、船が大型化したため、出漁のたびに多くの押し手の力に頼らねばならなかった。
つづく・・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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