『喝采』・・・第十六章
『喝 采』 ・・・作品紹介・・・
「ママさん社長」として世間の喝采を浴びる美咲。
だが実態は、大手企業を率いる御曹司に惹かれて愛人となり、夫と子供を裏切って手にした社長の地位だった。
順風満帆な美咲だが、頼りにしていた御曹司から会社への融資を断られ・・・
第十六章
時間が惜しかった。
大志と一緒にいるのは楽しいが、ビジネスのことが頭から離れなかった。
あの夜、美咲は逸見に十億円の増資を持ちかけた。
「私、エターナルをもっと大きくしたいの」
「・・・・」
「今のままでは、大手化粧品会社に太刀打ちできないし、黒字にするためには高級化粧品が必要なの」
「しかし時期尚早じゃないか?」
「逆にチャンスだと思うの。あなたが言う通り、私はエターナルの広告塔よ。もっと主婦層に知名度を高めて、一気に高級化粧品分野へも進出するべきだわ」
「・・しばらく考えさせてくれ。最近会社のルールも厳しくなってね。俺の一存では決められないことも増えてきたんだ」
苦りきった顔をつくった逸見は、そう答えて美咲を家に帰したのだった。
美咲は焦った。
十億円程度の投資など、独裁者である逸見の力を以ってすれば、大した金額ではないはずだった。
にもかかわらず、美咲の申し出に即決しないのは、何か理由でもあるのか気がかりになっていた。
屋外のベンチに腰かけたまま、美咲は逸見の態度を思い悩んだ。
大志が心配そうに美咲の顔を覗き込んだ。
「ママ、疲れちゃったの?」
「うん、大丈夫よ。ごめんね」
気丈さを大志に見せると、美咲は弘明がうろついている館内へ戻ろうとした。
突然携帯が鳴った。
「はい、三浦ですが」
「休日でお休みのところ申し訳ありません。私、エターナルの馬場です」
電話の主は専務の馬場守だった。
「あら、どうしたんですか?」
「いえ、電話で恐縮ですが、私ごとでお願いがありまして・・実は、会社を辞めさせて戴きたいのです」
つづく・・・
『不如帰~永遠の嘘』『色褪せぬ薔薇』 携帯小説サイト配信情報
[妄想の囲炉裏端]~掲示板入り口~
「ママさん社長」として世間の喝采を浴びる美咲。
だが実態は、大手企業を率いる御曹司に惹かれて愛人となり、夫と子供を裏切って手にした社長の地位だった。
順風満帆な美咲だが、頼りにしていた御曹司から会社への融資を断られ・・・
第十六章
時間が惜しかった。
大志と一緒にいるのは楽しいが、ビジネスのことが頭から離れなかった。
あの夜、美咲は逸見に十億円の増資を持ちかけた。
「私、エターナルをもっと大きくしたいの」
「・・・・」
「今のままでは、大手化粧品会社に太刀打ちできないし、黒字にするためには高級化粧品が必要なの」
「しかし時期尚早じゃないか?」
「逆にチャンスだと思うの。あなたが言う通り、私はエターナルの広告塔よ。もっと主婦層に知名度を高めて、一気に高級化粧品分野へも進出するべきだわ」
「・・しばらく考えさせてくれ。最近会社のルールも厳しくなってね。俺の一存では決められないことも増えてきたんだ」
苦りきった顔をつくった逸見は、そう答えて美咲を家に帰したのだった。
美咲は焦った。
十億円程度の投資など、独裁者である逸見の力を以ってすれば、大した金額ではないはずだった。
にもかかわらず、美咲の申し出に即決しないのは、何か理由でもあるのか気がかりになっていた。
屋外のベンチに腰かけたまま、美咲は逸見の態度を思い悩んだ。
大志が心配そうに美咲の顔を覗き込んだ。
「ママ、疲れちゃったの?」
「うん、大丈夫よ。ごめんね」
気丈さを大志に見せると、美咲は弘明がうろついている館内へ戻ろうとした。
突然携帯が鳴った。
「はい、三浦ですが」
「休日でお休みのところ申し訳ありません。私、エターナルの馬場です」
電話の主は専務の馬場守だった。
「あら、どうしたんですか?」
「いえ、電話で恐縮ですが、私ごとでお願いがありまして・・実は、会社を辞めさせて戴きたいのです」
つづく・・・
『不如帰~永遠の嘘』『色褪せぬ薔薇』 携帯小説サイト配信情報
[妄想の囲炉裏端]~掲示板入り口~