紅殻島(べんがらじま)・・・第二十二章
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『 紅 殻 島 』
二十二
早春とは言え、海辺を歩くと、薄手のコンパニオン用ドレスではまだ夜が肌寒く感じられる。
(・・きっと伊勢さんは)
ホテルでの宴会を終えた雛子は、闇に閉ざされた海を見ながら、ふうっと深くため息をついた。
街灯が路地裏を寂しく照らしている。
影が動いた。
「雛ちゃん」
やはり伊勢だった。
「あら、待っていてくれたの。嬉しいわぁ!」
わざと明るい素振りで伊勢の腕を取ると、雛子は暗い路地の階段を連れて上がった。
雛子のアパートは、六畳の和室一間に、キッチンとバス、トイレがついた古ぼけた部屋だった。
「さあ、入ってよ」
明かりを灯すと、雛子は伊勢を中へ招き入れた。
「久しぶりのお客が伊勢さんだなんて・・最近は熟女ブームのはずなんだけど、選ばれるのはいつも若い女の子なのよね。本当に頭に来ちゃうわ!」
お茶を淹れながら、雛子は伊勢へ饒舌に話しかけた。
だが伊勢は、くすりともせず思い詰めた顔で俯いている。
小さなテーブルに載ったお茶を挟んで、雛子と伊勢はしばらく無言で向かい合った。
「この島を出よう」
伊勢はぽつりとそれだけ言った。
「・・・・」
つづく・・・
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