「紅殻島」・・・(第一章)
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『 紅 殻 島 』
一.
深く入り組んだリアス式海岸の奥に、その島はぽつんと浮かんでいた。
M県W島。
わずか周囲七キロの小さな島は、真珠貝の筏を敷き詰めた穏やかな海と、春の息吹を映す新緑の山々に囲まれている。
国立公園にも指定される島は、海国の故郷を想わせる風光明媚な憧憬を残していた。
ところが、一たび夜の帳に包まれると、島はその素朴な情景を一変させる。
紅殻島。
地元に住む人々は、眉を顰めて島をそう呼んだ。
江戸時代、荒天に強い入り江の地形をから、この島は関東と関西を結ぶ廻船の風待港として栄えた。
時化が収まるまで、気の荒い船乗り達は島で足止めをくわされた。狭い島で精力を持て余した彼等のために、自然と国中から遊女が集まってきた。
山林と田畑としかない僻地に、見たこともない海上遊郭が姿を現した。
対岸から島まで一キロ弱。
篝火に照らされた紅殻格子の遊郭が、真っ暗な沖合に赤々と浮かび上がった。
風向きによっては、艶な着物を羽織った女達の嬌声が、倹しい暮らしを強いられる百姓の耳を惑わせた。
それから少なくとも三百年の時が経った。
時代が移り、海路がなくなった今も、紅殻島は女の体で命脈を保っていた。
遊郭はホテルや旅館に替わり、遊女はピンクコンパニオンと名を替えたが、辺鄙な島へ渡る男達の目的は変わらなかった。
つづく・・・
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