「それってセクハラ?」第十章・・・(紅殻格子)
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「それってセクハラ?」
十
健太は後退りした。
「そこは女子更衣室じゃないですか」
「そうよ。君みたいなセクハラ男が憧れる聖地よ。早くいらっしゃい」
葉月は厭味っぽくそう言うと、途惑う健太を更衣室へ引っ張り込んだ。
ロッカーが壁一面に並べられた女子更衣室は、
五十人ほどが入れる広さで、中央にテーブルと十脚ばかり椅子が置かれていた。
始業ベルが鳴った後の更衣室は、
女性社員の姿もなくただがらんとするばかりだった。
葉月は椅子に腰を下ろした。
「着替えが見られるって期待していたんじゃないの?」
「い、いえ・・別に・・」
期待していたわけではないが、
そんな光景を漠然と想像していた健太は、虚を突かれて素知らぬ振りをした。
「ったく、どうして男はみんなスケベなの。脳味噌が精液でできているのかしらね」
ぶつぶつ文句をいいながら、葉月は健太を隣に座らせると、
封筒からコピー用紙を取り出して見せた。
そこには写真がカラープリンターで印刷されていた。
画質は悪いが、どれにも着替えをしている女性達が写っていた。
肌蹴たブラウスから覗くブラジャー、スカートを下ろした無防備なヒップ――
だがその下着姿を晒す女性達からは、
そのことに気づいていないような表情が見て取れた。
「こ、これは・・と、盗撮ですか?」
「そうよ。気づいたのはそれだけ?」
「う~む、他には・・ん、この女性は黒のTバックじゃないですか?」
今度は葉月の平手が健太の前頭葉を捉えた。
「お馬鹿! よく見なさい、この制服を」
写真を凝視して健太ははっと気づいた。
女性達が着ているのは、見まがうことのないヴィーナス化粧品の制服だった。
更に驚かされたのは、写真の中に顔見知りの本社女性社員がいたことだった。
「あっ、この更衣室だ!」
健太が思わず声を荒げたのも無理はなかった。
葉月が出した盗撮写真は、今いるこの更衣室が舞台になっていたのだ。
「やっとわかった? わが社の女子更衣室が盗撮魔に狙われているのよ!」
激昂した葉月がテーブルを叩いた。
「昨夜、暇つぶしでネットを見ていたら、偶然この写真を発見したの。
いかがわしい盗撮系サイトで、
『ヴィーナスの鍵穴』と言う名前で投稿されていたわ」
「如月課長、しかし、しかしですよ、どうやってこの写真を撮影したんでしょう。
男が女子更衣室に入れるわけないし、
覗き穴が空いているわけでもないですよ」
健太は部屋の壁や天井を注意深く見回した。
「君は単純ねえ。こんな至近距離で盗撮できるのは、
犯人が女だからに決まっているでしょう」
つづく・・・
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「それってセクハラ?」
十
健太は後退りした。
「そこは女子更衣室じゃないですか」
「そうよ。君みたいなセクハラ男が憧れる聖地よ。早くいらっしゃい」
葉月は厭味っぽくそう言うと、途惑う健太を更衣室へ引っ張り込んだ。
ロッカーが壁一面に並べられた女子更衣室は、
五十人ほどが入れる広さで、中央にテーブルと十脚ばかり椅子が置かれていた。
始業ベルが鳴った後の更衣室は、
女性社員の姿もなくただがらんとするばかりだった。
葉月は椅子に腰を下ろした。
「着替えが見られるって期待していたんじゃないの?」
「い、いえ・・別に・・」
期待していたわけではないが、
そんな光景を漠然と想像していた健太は、虚を突かれて素知らぬ振りをした。
「ったく、どうして男はみんなスケベなの。脳味噌が精液でできているのかしらね」
ぶつぶつ文句をいいながら、葉月は健太を隣に座らせると、
封筒からコピー用紙を取り出して見せた。
そこには写真がカラープリンターで印刷されていた。
画質は悪いが、どれにも着替えをしている女性達が写っていた。
肌蹴たブラウスから覗くブラジャー、スカートを下ろした無防備なヒップ――
だがその下着姿を晒す女性達からは、
そのことに気づいていないような表情が見て取れた。
「こ、これは・・と、盗撮ですか?」
「そうよ。気づいたのはそれだけ?」
「う~む、他には・・ん、この女性は黒のTバックじゃないですか?」
今度は葉月の平手が健太の前頭葉を捉えた。
「お馬鹿! よく見なさい、この制服を」
写真を凝視して健太ははっと気づいた。
女性達が着ているのは、見まがうことのないヴィーナス化粧品の制服だった。
更に驚かされたのは、写真の中に顔見知りの本社女性社員がいたことだった。
「あっ、この更衣室だ!」
健太が思わず声を荒げたのも無理はなかった。
葉月が出した盗撮写真は、今いるこの更衣室が舞台になっていたのだ。
「やっとわかった? わが社の女子更衣室が盗撮魔に狙われているのよ!」
激昂した葉月がテーブルを叩いた。
「昨夜、暇つぶしでネットを見ていたら、偶然この写真を発見したの。
いかがわしい盗撮系サイトで、
『ヴィーナスの鍵穴』と言う名前で投稿されていたわ」
「如月課長、しかし、しかしですよ、どうやってこの写真を撮影したんでしょう。
男が女子更衣室に入れるわけないし、
覗き穴が空いているわけでもないですよ」
健太は部屋の壁や天井を注意深く見回した。
「君は単純ねえ。こんな至近距離で盗撮できるのは、
犯人が女だからに決まっているでしょう」
つづく・・・