「禁断の遺伝子」第十五章・・・(紅殻格子)
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
十五
その時、襖がスッと開いた。
「お嬢さん、親を獣と呼ぶのはいけないよ」
浴衣姿の鴻巣だった。
「な、何で? あ、あなた、早くこの人を追い払ってよ!」
月絵は慌てて両手で乳房を隠し、周一に鴻巣を出て行かせるよう命じた。
「月絵、俺も鴻巣さんの意見に賛成だな」
「何を馬鹿な・・あなたは妻の体を他人に晒して平気なの?」
「別に・・俺も変態だからね」
「獣! あなたも獣だわ!」
夫が頼りにならないとわかるや、再び月絵は抗い始めた。
両掌で乳首を隠しているが、食み出した柔肉が却って淫靡に揺れている。
鴻巣はもがく月絵の顔を覗き込んで眼鏡を外した。
「お嬢さん、私の顔を覚えていないかな?」
訝しそうに月絵は鴻巣の顔を眺めていたが、はっと気づいたように目を見開いた。
「・・写真の・・あっ、あの時の・・」
「あの夜は可哀想なことをしたね。
孝蔵様も静子奥様も、お嬢さんを傷つけてしまったことを後悔していたよ」
「・・・・」
「でもね、お嬢さんもそんなに頑なにならないで、
そろそろご両親を許してあげてもいいんじゃないかな」
月絵はキッと鴻巣を睨み返した。
「偉そうに説教なんかしないでよ。あなたは同じ穴の狢でしょう。
両親と変わらない獣だわ!」
「お嬢さんは性の悦びを知らないのかな?」
「そんなもの知りたくもないわ!」
「人間は好色な生き物だよ。その悦びがわからなければ、
ご両親がどうして獣のようなことをしたかわからないだろう。
性に未熟な処女が、夫婦の深い情を理解できないのと一緒だ。
これはご主人の怠慢かな」
「はあ・・済みません」
「やはり荒療治が必要だね。性の悦びがわかれば、
孝蔵様と静子奥様の夫婦の絆が身をもってわかるだろう」
つづく・・・