小説「内助の功」第六章・・・(紅殻格子)
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「内助の功」 紅殻格子
六
東京都心のホテル。
そのバンケット・ルームでは、約三百人を集めた盛大なパーティーが催されていた。
『岩井源三の還暦を祝う会』
広い宴会場に屯する客の中には、顔に見覚えがある政治家や経営者、
芸能人が多く混じっていた。
裕一は華やかな会場の中、手持ち無沙汰な表情で壁際に立っていた。
社長個人の還暦祝いだが、内実は岩井建設の本社総務部が運営しており、
裕一も手伝いとして借り出されていた。
晴れがましい壇上では、小柄だが恰幅のいい社長と新妻美紀が、
揃って著名人達の祝辞を受けている。
普段は社長秘書として制服姿の美紀だが、今夜は薄い藤色の着物に身を包み、
淑やかな美しさを会場に添えていた。
社長が白羽の矢を立てただけあって、美紀は細面の美人で、
和服が似合う純日本的な顔立ちをしている。
そして華奢にも見える細身からは、
繊細で奥ゆかしい大和撫子の風情を漂わせていた。
宴が歓談に入るのを見計らって、裕一は宴会場から外へ出た。
帰り客のタクシーを手配する仕事があるからだった。
階下にあるフロントの前まで来た時、裕一は不意に背後から声をかけられた。
つづく・・・