『人外境の花嫁』十.暗黒の救済者(十)
『人外境の花嫁』
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十.暗黒の救済者(十)
月絵はハラハラしながらも、降矢木の語ることを理解しようとした。
人間の根源的な本能である性を共有することで、それも禁忌と邪悪視されてきた乱交を行うことで、世間の価値観から隔絶された人外境を乱裁はつくろうとした。
孤立したコミュニティは、次第に価値基準が世間一般からずれ始め、その異質さから内部に固執して更に先鋭化していく。
過去の異端宗教や戦前の日本がそうであったように、世間から迫害されることで、いっそう彼等は闇の深みに肩を寄せ合って潜り込むのだ。
(そんな人間の心理を使って、乱裁は大麻の秘密を世間から隠してきたのね)
更に乱交は、男も女も私的所有を放棄させる性行為なのである。
乱交から共産主義が生まれた。
いつだったか降矢木が教えてくれた都市伝説のような話である。
天神会は幹部にも階層を持たせているが、それは便宜的なものであって、下級幹部の男は上級幹部の女を抱くこともできる。
つまり乱裁の下では全てが持たざる者であり、生理的には全員が平等なのである。
共産主義で共産党が独裁するように、天神会では本来乱裁以外は権力を持てない仕組みがつくられていたのである。
しかし独裁者も死までは支配できない。
どんな宗教でも組織を残そうとすれば、後継者を指名せざるを得ない。
今まさに天神会がもがき苦しんでいるのは、後継となる独裁者を乱裁が選べないところなのだろう。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。