『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(六)
『人外境の花嫁』
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八.山奥の探索者 (六)
畠山も月絵もペーパードライバーで、運転には自信がなかった。
「本当にいいんですか?」
「構わないわよ、箕面谷は通り道だから。帰りも近くの駅まで送ってあげるわ」
女はにっこり笑って、のぼせちゃうわよと月絵を洗い場へ誘った。
体を洗いながら会話が弾む。
女の名は小山菜穂。
生まれは福岡だが、結婚して球磨地方の農家に嫁いだと言う。
(それで鍛えられた体をしているのか)
隣で体を洗う菜穂を見て、月絵は自然と納得した。
腹筋が薄らと覗くその下腹部は、まるでボディビルダーのように思えた。
菜穂と明朝九時にロビーで待ち合わせすることを約束した月絵は、風呂から上がってぽつんと一つ布団が敷かれた和室に戻った。
窓の外に球磨川が流れている。
(・・先生)
急に涙が溢れてきた。
月絵が妹のような存在であった昔なら、降矢木は心配して一緒に来てくれただろう。
恋心を抱いたことが、却って降矢木を怒らせてしまったのかもしれない、
(・・でも仕方ないじゃない・・先生)
月絵は夜が更けるまで、ぼんやりと球磨川を眺めていた。
翌朝。
二日酔いの畠山を叩き起こした月絵は、旅館の精算を済ませて菜穂を捜した。
「月絵さん。今、主人が駐車場から車を出しに行っているから」
「ご親切に有難うございます」
月絵と畠山が菜穂に頭を下げると、旅館の玄関が開いて男が入って来た。
「主人が来ました」
菜穂が主人と呼んだ男は、猿そっくりの顔をしていた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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「構わないわよ、箕面谷は通り道だから。帰りも近くの駅まで送ってあげるわ」
女はにっこり笑って、のぼせちゃうわよと月絵を洗い場へ誘った。
体を洗いながら会話が弾む。
女の名は小山菜穂。
生まれは福岡だが、結婚して球磨地方の農家に嫁いだと言う。
(それで鍛えられた体をしているのか)
隣で体を洗う菜穂を見て、月絵は自然と納得した。
腹筋が薄らと覗くその下腹部は、まるでボディビルダーのように思えた。
菜穂と明朝九時にロビーで待ち合わせすることを約束した月絵は、風呂から上がってぽつんと一つ布団が敷かれた和室に戻った。
窓の外に球磨川が流れている。
(・・先生)
急に涙が溢れてきた。
月絵が妹のような存在であった昔なら、降矢木は心配して一緒に来てくれただろう。
恋心を抱いたことが、却って降矢木を怒らせてしまったのかもしれない、
(・・でも仕方ないじゃない・・先生)
月絵は夜が更けるまで、ぼんやりと球磨川を眺めていた。
翌朝。
二日酔いの畠山を叩き起こした月絵は、旅館の精算を済ませて菜穂を捜した。
「月絵さん。今、主人が駐車場から車を出しに行っているから」
「ご親切に有難うございます」
月絵と畠山が菜穂に頭を下げると、旅館の玄関が開いて男が入って来た。
「主人が来ました」
菜穂が主人と呼んだ男は、猿そっくりの顔をしていた。
つづく…
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