『人外境の花嫁』六.伏魔殿の監禁者(二)
『人外境の花嫁』
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六.伏魔殿の監禁者 (二)
ミーアと名乗る少女は、折り畳んだ純白の布を麻美に差し出した。
「麻美様、この服をお召し下さい」
ポンチョのような貫頭衣を被せられた麻美は、シルクの滑らかさを素肌に感じた。
見ると、ミーアも同じデザインの若草色の貫頭衣を着ている。
「これは・・?」
「組織の幹部が着る儀礼服です。私は十三階位中七階位なので若草色ですが、麻美様は十二階位ですので白の儀礼服になります」
首と両腕だけ通す穴が開いた薄絹は、丈が足首あたりまであるものの、体に密着していないせいか、どこかふわふわと心許ない感じがした。
だが着衣に勇気を得た麻美は、自分の娘ほどのミーアに毅然とした態度で問い詰めた。
「幹部って・・私は拉致されたのよ。一体ここは何処なの?」
「は、はい、天神会の横浜支部です」
「天神会?」
麻美もその団体名は聞いたことがある。
横浜の寿町に支部を構え、浮浪者達に炊き出しを行なう慈善団体だった。
寿町。
それは東京の山谷や大阪の釜ヶ崎に次ぐ横浜一のドヤ街である。
簡易宿泊所が建ち並ぶ通りには、日雇いにあぶれた男達が寝転がり、昼間から安酒のビンを並べる異臭漂う街だった。
麻美は続けて聞いた。
「天神会が何故私を拉致したの? それも幹部などとわけのわからないことを・・」
次第に昂ってきた麻美の言葉に、ミーアはただ怯えた瞳を向けるだけだった。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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見ると、ミーアも同じデザインの若草色の貫頭衣を着ている。
「これは・・?」
「組織の幹部が着る儀礼服です。私は十三階位中七階位なので若草色ですが、麻美様は十二階位ですので白の儀礼服になります」
首と両腕だけ通す穴が開いた薄絹は、丈が足首あたりまであるものの、体に密着していないせいか、どこかふわふわと心許ない感じがした。
だが着衣に勇気を得た麻美は、自分の娘ほどのミーアに毅然とした態度で問い詰めた。
「幹部って・・私は拉致されたのよ。一体ここは何処なの?」
「は、はい、天神会の横浜支部です」
「天神会?」
麻美もその団体名は聞いたことがある。
横浜の寿町に支部を構え、浮浪者達に炊き出しを行なう慈善団体だった。
寿町。
それは東京の山谷や大阪の釜ヶ崎に次ぐ横浜一のドヤ街である。
簡易宿泊所が建ち並ぶ通りには、日雇いにあぶれた男達が寝転がり、昼間から安酒のビンを並べる異臭漂う街だった。
麻美は続けて聞いた。
「天神会が何故私を拉致したの? それも幹部などとわけのわからないことを・・」
次第に昂ってきた麻美の言葉に、ミーアはただ怯えた瞳を向けるだけだった。
つづく…
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