『人外境の花嫁』五.秘苑の懊悩者 (七)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
五.秘苑の懊悩者 (七)
そんな時に現れたのが降矢木だった。
月絵を心配した金治は、修士課程を終えてブラブラしていた近所の降矢木を家庭教師として迎えた。
事情を聞いていた降矢木は、無理矢理月絵を街へ連れ出した。
「ガキは何もわかっていない!」
怒ったように降矢木は言うと、路地裏にある貧しい古アパートの玄関を開けた。
部屋の扉を叩くと、そこには赤子を抱いた女がいた。
「あら、薬局の坊っちゃん・・」
明らかに水商売とわかる女は、胸元が開いたブラウスから片乳を出して、生まれたばかりの赤子に授乳していた。
降矢木は月絵の手をぐっと引き寄せた。
「見ろ、この女はピンサロで働く女だ。体を切り売りして暮らしている。だが決して卑しくなんかない。この子の立派な母親だ!」
女の真っ白い乳房は、青黒い血管が浮き出していた。
そして黒く大きな乳暈は女ではなく母のものだった。
「・・・・」
「ストリッパーの何が悪い。女達は必死に生きているんだ。好きで体を穢しているわけじゃない。弱い者はこうして生きていくしかないんだ!」
今と変わらず、顔を真っ赤にして激昂する降矢木に、金治にも怒られたことがない月絵は立ちすくむばかりだった。
「君のお母さん、マリーだって懸命だったはずだ。君を育てるために、泥水をすすって生きようとしたんじゃないか?」
眼鏡の奥から月絵を見る降矢木の目は、わずかに赤く潤んでいた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
五.秘苑の懊悩者 (七)
そんな時に現れたのが降矢木だった。
月絵を心配した金治は、修士課程を終えてブラブラしていた近所の降矢木を家庭教師として迎えた。
事情を聞いていた降矢木は、無理矢理月絵を街へ連れ出した。
「ガキは何もわかっていない!」
怒ったように降矢木は言うと、路地裏にある貧しい古アパートの玄関を開けた。
部屋の扉を叩くと、そこには赤子を抱いた女がいた。
「あら、薬局の坊っちゃん・・」
明らかに水商売とわかる女は、胸元が開いたブラウスから片乳を出して、生まれたばかりの赤子に授乳していた。
降矢木は月絵の手をぐっと引き寄せた。
「見ろ、この女はピンサロで働く女だ。体を切り売りして暮らしている。だが決して卑しくなんかない。この子の立派な母親だ!」
女の真っ白い乳房は、青黒い血管が浮き出していた。
そして黒く大きな乳暈は女ではなく母のものだった。
「・・・・」
「ストリッパーの何が悪い。女達は必死に生きているんだ。好きで体を穢しているわけじゃない。弱い者はこうして生きていくしかないんだ!」
今と変わらず、顔を真っ赤にして激昂する降矢木に、金治にも怒られたことがない月絵は立ちすくむばかりだった。
「君のお母さん、マリーだって懸命だったはずだ。君を育てるために、泥水をすすって生きようとしたんじゃないか?」
眼鏡の奥から月絵を見る降矢木の目は、わずかに赤く潤んでいた。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。