『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(八)
『人外境の花嫁』
FC2 Blog Ranking
四.黄昏時の掠奪者 (八)
麻美には初めて話すね。
母ちゃんが生まれたのは、滅多に人も通らん山の中だった。
山里の村かって?
いいや、山里よりもっともっと山深いところよ。
電気も来ない。
郵便も届かない。
そもそも住む家などないから、山の河原や洞穴で寝泊まりしていたんだよ。
ユサバリっていうテントがあってね、その中で家族が暮らしていた。
夏の暑い時も冬の寒い時も、そう、毎日がキャンプみたいなもんだったよ。
ユサバリには炉が切ってあってね、鍋をテンジンに吊るしてご飯を煮炊きするのさ。
ああ、ガスなんかないからね、火をおこす枯れ枝を山へ集めに行ったもんだよ。
トイレ?
あはは、そんなもんないさ。
子供も大人も森の中でやりっ放しだった。
そこらに落ちている木の葉でお尻を拭いてさ。
でも風呂は露天風呂だよ。
たいていは川の水浴びで済ませるけど、寒くなると焼いた石を水溜りに投げこんで、温泉みたいにして入ったねえ。
テレビやラジオはなかったけど、夏は裸になって川で遊んだ。
魚やウナギ、スッポンもたくさん獲った。
秋になると、山へキノコを採りに行ったりしてね。
何だい、ポカンとした顔をして。
住む家がないなんて麻美には信じられないだろうね。
でも母ちゃんが子供の頃はね、周りにそんな家族がたくさんあったんだよ。
母ちゃん達と山で暮らしていたのは、三家族で十五人ぐらいだったかな。
みんな仲良しで楽しかったよ。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
FC2 Blog Ranking
四.黄昏時の掠奪者 (八)
麻美には初めて話すね。
母ちゃんが生まれたのは、滅多に人も通らん山の中だった。
山里の村かって?
いいや、山里よりもっともっと山深いところよ。
電気も来ない。
郵便も届かない。
そもそも住む家などないから、山の河原や洞穴で寝泊まりしていたんだよ。
ユサバリっていうテントがあってね、その中で家族が暮らしていた。
夏の暑い時も冬の寒い時も、そう、毎日がキャンプみたいなもんだったよ。
ユサバリには炉が切ってあってね、鍋をテンジンに吊るしてご飯を煮炊きするのさ。
ああ、ガスなんかないからね、火をおこす枯れ枝を山へ集めに行ったもんだよ。
トイレ?
あはは、そんなもんないさ。
子供も大人も森の中でやりっ放しだった。
そこらに落ちている木の葉でお尻を拭いてさ。
でも風呂は露天風呂だよ。
たいていは川の水浴びで済ませるけど、寒くなると焼いた石を水溜りに投げこんで、温泉みたいにして入ったねえ。
テレビやラジオはなかったけど、夏は裸になって川で遊んだ。
魚やウナギ、スッポンもたくさん獲った。
秋になると、山へキノコを採りに行ったりしてね。
何だい、ポカンとした顔をして。
住む家がないなんて麻美には信じられないだろうね。
でも母ちゃんが子供の頃はね、周りにそんな家族がたくさんあったんだよ。
母ちゃん達と山で暮らしていたのは、三家族で十五人ぐらいだったかな。
みんな仲良しで楽しかったよ。
つづく…
皆様から頂くが小説を書く原動力です
人気ブログランキング~愛と性~
紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。