『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(十二)
『人外境の花嫁』
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三.青楼街の偏執狂 (十二)
だが降矢木は、ふんと鼻を鳴らすと、埃を被った一冊の書物を取り上げた。
「それは旧約聖書的な迷信だよ。ダーウィンの進化論を信じていながら、アダムとイヴが原初の夫婦であったとは大笑いだな」
「・・はあ?」
「進化論を信じるなら、原始人間はサルだったとことになる。果たしてサルは、厳密に一夫一婦制を営んでいるかな?」
畠山と月絵は、いつものことではあるが、顔を見合わせて降矢木の前に沈黙した。
「そもそもだね、原始人間は乱交状態にあったか否かは、十九世紀後半における文化人類学の大きなテーマだったのだよ」
降矢木はそう言うと、『母権論』と題字された本を捲った。
バッハオーフェンは『母権論』の中で、娼婦制と規定した原始乱交の時代から、集団婚など緩やかな結婚が生まれた母権制の時代、そして夫婦の排他的で独占的な性関係が確立した父権制の時代へと発展してきたと説く。
「このバッハオーフェンの着眼が、後にマルクスやエンゲルスが共産主義理論へと発展させたのだよ」
畠山と月絵は目を丸くした。
「えっ、乱交から共産主義が生まれたんですか・・」
「そうだよ。何故なら乱交とは、男も女も誰の所有物でもない状態じゃないか」
降矢木は顔色一つ変えず、さも当たり前のように言い放った。
つづく…
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「それは旧約聖書的な迷信だよ。ダーウィンの進化論を信じていながら、アダムとイヴが原初の夫婦であったとは大笑いだな」
「・・はあ?」
「進化論を信じるなら、原始人間はサルだったとことになる。果たしてサルは、厳密に一夫一婦制を営んでいるかな?」
畠山と月絵は、いつものことではあるが、顔を見合わせて降矢木の前に沈黙した。
「そもそもだね、原始人間は乱交状態にあったか否かは、十九世紀後半における文化人類学の大きなテーマだったのだよ」
降矢木はそう言うと、『母権論』と題字された本を捲った。
バッハオーフェンは『母権論』の中で、娼婦制と規定した原始乱交の時代から、集団婚など緩やかな結婚が生まれた母権制の時代、そして夫婦の排他的で独占的な性関係が確立した父権制の時代へと発展してきたと説く。
「このバッハオーフェンの着眼が、後にマルクスやエンゲルスが共産主義理論へと発展させたのだよ」
畠山と月絵は目を丸くした。
「えっ、乱交から共産主義が生まれたんですか・・」
「そうだよ。何故なら乱交とは、男も女も誰の所有物でもない状態じゃないか」
降矢木は顔色一つ変えず、さも当たり前のように言い放った。
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