二十三夜待ち 第十七章
二十三夜待ち 第十七章
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素封家の睦沢家に嫁ぎながら、夫の和馬ではなく、かつての生徒だった画家の下布施清一を愛した千代。
千代は社会が用意してくれた幸福を捨て、清一の心の中に生き続ける道を選んだのだろう。
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素封家の睦沢家に嫁ぎながら、夫の和馬ではなく、かつての生徒だった画家の下布施清一を愛した千代。
千代は社会が用意してくれた幸福を捨て、清一の心の中に生き続ける道を選んだのだろう。
だが小鶴は、道具としての暮らしに不満を抱えながらも、夫や家族を捨てる勇気が持てずに躊躇っている。
寛三に愛されたい。
一度だけでも抱かれたい。
その想いは真実だが、社会から逸脱してしまう恐怖が小鶴を踏み止まらせていた。
その時、小鶴は千代の声を聞いた。
(小鶴、幸せは自分でつかむものよ)
おそらく子供がいなければ、千代は清一と駆け落ちしていたのかもしれない。
あの激しい情事を目撃した小鶴は、それも至極当たり前のことと今になれば思えた。
たとえ赤貧洗うが如き暮らしに身を落とそうが、男に愛されて生きる幸せは、女にとって無上の西方浄土なのではないだろうか。
愛される幸せ。
愛する幸せ。
男と女の歓びを知らずして、与えられた命を虚しく終えるなら、何のために生まれてきたのかわからないではないか。
小鶴は寛三の手を振り解くと、自分から絣の着物を脱ぎ捨てて全裸になった。
「こ、小鶴さん」
思わぬ小鶴の大胆さに、寛三は後退りしながら血走った目を大きく見開いた。
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