小説「懺悔」 第六章・・・
『懺 悔』 紅殻格子
六.
・・・・・智彦の部屋です。
気がつくと、私はベッドに寝かされていました。
いえ、寝かされていたのではありません。
両手両脚を大の字に開かされ、ベッドに縛りつけられていたのです。
「と、智彦・・」
私は手足を動かそうとしました。
でもカチャカチャと金属的な音がするだけで、固定された体は身じろぎ一つできません。
見ると、両手足には手錠がかけられており、
その鎖はそれぞれ金属製ベッドの四隅についたパイプに繋がれています。
「やっと気がついた?」
智彦が私の顔を上から覗き込むように尋ねました。
「ねえ、智彦。何でこんなことをするの? お願い、すぐに手錠を外して」
「そうはいかないんだな」
哀願する私に、智彦は冷ややかな笑みを浮かべて答えました。
「母親にこんなことをするなんて・・いつから智彦は・・」
「母親?」
智彦の顔色が変わりました。
「何が母親だ。子供に隠れて浮気をするのが母親のすることか?」
「そ、それは、パパが仙台で・・」
「そんなこと関係ないだろう! もしそれが事実だとしても、
浮気をしていい理由にはならないじゃないか。子供の心を傷つけて、その言い草は何だ!」
智彦は平手で私の頬を叩きました。
「もう嫌だ。こんな淫乱女が母親だなんて信じたくない。
だから、だから僕は、あなたに母親を辞めてもらわなければならないんだ」
「は、母親を辞めるって・・」
「そう、優しかったママは死んだんだ。
今僕の目の前にいるのは、どんな男でもくわえ込む淫乱な雌豚だ!」
智彦は目に涙をいっぱい溜めながら叫ぶと、
机の引出しから何か鈍く光るものを取り出したのです。鋏です。
「ば、馬鹿なことは止めて・・智彦・・」
鋏を手に迫ってくる智彦を私は何とか思い止まらせようとしました。
でもその顔は狂気に歪んでいます。私は必死に身をよじって逃げようとしましたが、
両手足をベッドに括りつける手錠の音だけが虚しく響くだけでした。
冷たい刃が肌に当たります。
「やめて! やめて、智彦!」
刺されると観念して目を瞑りました。でも痛みはありませんでした。
そっと目を開けると、身動きできない私の服を智彦が切り刻んでいたのです。
「な、何をするつもりなの?」
ほっとした反面、私は智彦の行動がすぐには理解できませんでした。
やがてブラウスが切り刻まれ、鋏がスカートの裾を餌食にし始めた時、
遅まきながら私は智彦の意図を知ったのです。
裸にしようとしている。
「い、いやっ! だめ、絶対だめ!」
わかった瞬間、私は狂ったように叫びました。
でも智彦は、抗う私を冷たく無視してスカートを切り取ってしまいました。
そして剥き出しになった下半身を守るストッキングを荒々しく破ると、
ふうっと大きく深呼吸したのです。
「この体が家族を目茶目茶にしたんだ」
辛うじてブラジャーとショーツだけで覆われた裸身を前に、
ぶつぶつと智彦は何度も呟きました。
そして鋭い煌きを放つ鋏をブラジャーの真中に差し入れたのです。
「いけないわ、智彦。よく考え直して」
私は智彦を正気に返そうと懸命に呼びかけました。
しかし鋏は無残にも鈍い音を立て、ブラジャーを真っ二つに切り裂いたのです。
乳房が智彦の目に晒されました。
ギラギラした智彦の目が、ふるふると震える膨らみに立つ乳首を執拗に追います。
「この乳首を他人に吸わせたんだな」
ポツリとそれだけ言うと、智彦は鋏の片刃をそっと乳首に当てました。
「嫌、やめて!」
智彦に殺されてもいいと割り切った私ですが、あまりの恐ろしさにぞっと鳥肌が立ちました。
「やめてと言いながら、乳首が立ってきたじゃないか」
「そ、それは怖いから・・」
「うるさい。これが淫乱女の隠さぬ証拠だ。くそっ!」
仰向けに拘束された腰の上に、智彦が馬乗りになりました。
そして荒々しく乳房を揉みしだくや、乳首を口に含んだのです。
「あ、ダメ、ダメよ」
私は狂った息子の愛撫から逃れようと、必死にブリッジをして上半身をよじりました。
でも体は覚えているのかもしれません。十五年前、智彦に母乳を与えていた頃のことを。
乳房を吸う智彦。 それは母としての甘い甘い思い出です。
私は理性を失いかけ、うっとりとした陶酔に襲われそうになりました。
「!」
赤子の智彦が乳を飲む時とは明らかに違いました。
乳首を口に含んで吸いながら、智彦は舌の先を妖しくチロチロと動かしています。
「・・あ・・」
私は迂闊にも小さな吐息を漏らしてしまいました。
乳を吸う我が子ではなく、それが男の愛撫だとわかった瞬間、
悦びの微電流が体を駆け抜けたからです。
「淫乱女め、息子に乳首を吸われて感じるのか?」
「ち、違う・・私は・・」
「畜生、言い訳するな!」
乳房を弄んでいた智彦は、私の体から離れると再び鋏を手にしました。
「やめて! もう許して」
鬼となった智彦に私の言葉など無力でした。最後に残されたショーツに鋏が入れられました。
とうとう私は智彦の前で全裸にされたのです。
つづく・・・