『蟻地獄』 第十八章
『蟻地獄』
十八
艶めかしく両脚まで川崎の腰に絡ませた佳美は、自分から腰を振って刺さった肉茎を咥え込んでいく。
やがて会話も途切れ、川崎の荒い呼吸と佳美の切ない喘ぎ声だけが、広いリビングに幾重にも反響する。
二人は交わりながら、ただ魅入られたように悦楽だけを貪り続けた。
(・・・・)
和彦は我に返った。
びっしょり全身に汗をかき、無意識に肉茎をしごいていた。
時計を見ると、佳美と川崎を隣室で二人きりにして三十分が経っていた。
(そろそろいいだろう)
意を決した和彦は、サッシを開けてバルコニーへ出た。
外は漆黒の闇。
避難用間仕切りの隙間から覗くと、隣室のカーテンが少し開いて細く明かりが漏れている。
和彦は手すりにつかまって下を見た。
十三階の高さに足が竦む。
暗くて見えないが、マンションに沿って歩道があり、堤防の先は海になっているはずだった。
(ああ、今頃佳美は・・)
和彦はもう高さに怯えることも忘れた。
アルミ製の手すりを乗り越えると、和彦は隣室のバルコニーに降り立った。
和彦は身の毛がよだつような緊張を覚えた。
(いいんだよ、佳美・・それでも僕の気持は変わらない・・)
由香の淫らな痴態が脳裏で明滅する。
和彦はカーテンの隙間からそっと中を覘いた。
「えっ」
思わず和彦は小さな驚愕の声を出した。
ガラスの向こうでは、先ほどまで変わらず、佳美と川崎が談笑しているだけだった。
つづく…
「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る
十八
艶めかしく両脚まで川崎の腰に絡ませた佳美は、自分から腰を振って刺さった肉茎を咥え込んでいく。
やがて会話も途切れ、川崎の荒い呼吸と佳美の切ない喘ぎ声だけが、広いリビングに幾重にも反響する。
二人は交わりながら、ただ魅入られたように悦楽だけを貪り続けた。
(・・・・)
和彦は我に返った。
びっしょり全身に汗をかき、無意識に肉茎をしごいていた。
時計を見ると、佳美と川崎を隣室で二人きりにして三十分が経っていた。
(そろそろいいだろう)
意を決した和彦は、サッシを開けてバルコニーへ出た。
外は漆黒の闇。
避難用間仕切りの隙間から覗くと、隣室のカーテンが少し開いて細く明かりが漏れている。
和彦は手すりにつかまって下を見た。
十三階の高さに足が竦む。
暗くて見えないが、マンションに沿って歩道があり、堤防の先は海になっているはずだった。
(ああ、今頃佳美は・・)
和彦はもう高さに怯えることも忘れた。
アルミ製の手すりを乗り越えると、和彦は隣室のバルコニーに降り立った。
和彦は身の毛がよだつような緊張を覚えた。
(いいんだよ、佳美・・それでも僕の気持は変わらない・・)
由香の淫らな痴態が脳裏で明滅する。
和彦はカーテンの隙間からそっと中を覘いた。
「えっ」
思わず和彦は小さな驚愕の声を出した。
ガラスの向こうでは、先ほどまで変わらず、佳美と川崎が談笑しているだけだった。
つづく…
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