心の闇⑥ 泪橋(その2)…降矢木士朗
心の闇⑥ 泪橋(その2)…降矢木士朗
FC2 R18官能小説
心の闇⑥ 泪橋(その2) 降矢木士朗
『三河島事故』は、昭和三十七年に起きた二重列車衝突事故です。
死者160人、負傷者300人という痛ましい数の被害者が出て、それ以降自動列車停止装置(ATS)が急ぎ設置されたといいます。
その日の三河島駅は、そんな事故が起きた過去を微塵も感じさせず、高架のホームに爽やかな風が吹き渡っていました。
月絵がホームから見える建物を指さしました。
「あんなところに可愛い教会がありますよ」
街の教会と焼肉店の多さから、私はこの街の素性を感じとっていました。
キリスト教会がある場所は、かつてす貧しい街だったことが多いのです。
何を隠そう私が生まれ育った家の近くにも小さな教会がありました。
そこは港湾労働者が居住するスラム街でした。
若い人にはわからないかもしれませんが、街には歴史があるのです。
その散りばめられた破片を見つけるところに、街探索の楽しさがあるのかもしれません。
さて月絵と私は三河島から日暮里方面へ歩きました。
スカイツリーが古い民家の狭間から見え隠れします。
「先生、スカイツリーですよ・・・でも何か不思議な感じがします」
「そうかな?」
月絵は三河島から見えるスカイツリーに違和感を覚えているようですが、それが何かにまだ気づいていないようでした。
肉関係の店が多いことを確認しながら、私達は日暮里の繊維街を歩きました。
浅草の近辺には、昔から同じ職業の人々が街をつくっているのです。
合羽橋もそうですし、皮革店が集中しているところもあります。
そんなことを考えながら、旅を終えて日暮里駅から帰ろうとした時です。
「先生、あれ!」
月絵が指差したのは、都営バスの運行経路板でした。
「泪橋って書いてありますよ。『明日のジョー』に出てくる泪橋じゃないですか?」
日暮里発亀戸行きのバスです。
「・・ああ、泪橋ってこんなところにあったのか・・」
誰もが漫画で知っているあの景色・・確かに時代は違えど実物を見たことはありませんでした。
「私、行ってみたい。先生、バスに乗りましょう」
張りきった月絵は、途惑う私の手を引いて強引にバスへ誘いました。
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死者160人、負傷者300人という痛ましい数の被害者が出て、それ以降自動列車停止装置(ATS)が急ぎ設置されたといいます。
その日の三河島駅は、そんな事故が起きた過去を微塵も感じさせず、高架のホームに爽やかな風が吹き渡っていました。
月絵がホームから見える建物を指さしました。
「あんなところに可愛い教会がありますよ」
街の教会と焼肉店の多さから、私はこの街の素性を感じとっていました。
キリスト教会がある場所は、かつてす貧しい街だったことが多いのです。
何を隠そう私が生まれ育った家の近くにも小さな教会がありました。
そこは港湾労働者が居住するスラム街でした。
若い人にはわからないかもしれませんが、街には歴史があるのです。
その散りばめられた破片を見つけるところに、街探索の楽しさがあるのかもしれません。
さて月絵と私は三河島から日暮里方面へ歩きました。
スカイツリーが古い民家の狭間から見え隠れします。
「先生、スカイツリーですよ・・・でも何か不思議な感じがします」
「そうかな?」
月絵は三河島から見えるスカイツリーに違和感を覚えているようですが、それが何かにまだ気づいていないようでした。
肉関係の店が多いことを確認しながら、私達は日暮里の繊維街を歩きました。
浅草の近辺には、昔から同じ職業の人々が街をつくっているのです。
合羽橋もそうですし、皮革店が集中しているところもあります。
そんなことを考えながら、旅を終えて日暮里駅から帰ろうとした時です。
「先生、あれ!」
月絵が指差したのは、都営バスの運行経路板でした。
「泪橋って書いてありますよ。『明日のジョー』に出てくる泪橋じゃないですか?」
日暮里発亀戸行きのバスです。
「・・ああ、泪橋ってこんなところにあったのか・・」
誰もが漫画で知っているあの景色・・確かに時代は違えど実物を見たことはありませんでした。
「私、行ってみたい。先生、バスに乗りましょう」
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