心の闇⑤ 墓標(その2)…降矢木士朗
心の闇⑤ 墓標(その2) 降矢木士朗
漁船に毛が生えたほどの渡し船が夜の海をW島へ向かいます。
わずか15分ほどで接岸した船着き場には、近代的なホテルが二三軒建ち並んでいました。
静かな海辺の保養地といった風情です。
ところが予約したホテルに入って私と月絵は吃驚しました。
学校の夏休みにもかかわらず家族連れは数えるほどで、団体旅行や一人の男客ばかりが目につきます。
そして派手な衣装をつけた頽廃的なコンパニオンが、ホテルのロビーを我が物顔で歩いています。
「先生・・」
前もって畠山君から男のパラダイスと聞いたものの、母の面影を募らせていた月絵は、その現実を見せられてショックを受けているようでした。
海を望む広い部屋に案内された私は、座卓に載った二つの湯のみを見て初めて気づきました。
「あれ、月絵君の部屋は?」
「・・・こ、この部屋しか空いていなかったんです」
窓辺にもたれた月絵は、顔を真っ赤にしてもじもじとしています。
「そうか・・・それなら仕方ないな」
一途な月絵の気持ちを知りつつも、彼女を幸せにする自信がない私は、ただ言葉を濁すしかありませんでした。
宿の食事は地元名産のアワビづくしです。
厭と言うほどアワビを堪能した私達は、夜の街へ出かけてみました。
つづく…
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「あれ、月絵君の部屋は?」
「・・・こ、この部屋しか空いていなかったんです」
窓辺にもたれた月絵は、顔を真っ赤にしてもじもじとしています。
「そうか・・・それなら仕方ないな」
一途な月絵の気持ちを知りつつも、彼女を幸せにする自信がない私は、ただ言葉を濁すしかありませんでした。
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