『独りぼっちの部屋』 ・・・第十六章
『独りぼっちの部屋』
第十六章
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身を浸す悦びに打ち震える人妻が叫んだ。
悪魔は女だった。
女は灰になっても女だという。妻でもなく母でもなく、女は女として死ぬために、性を司る悪魔を下腹部に秘めているのかもしれない。
「お、奥さん・・」
「あっ、あっ・・奥さんなんて厭・・私は夫の付属品じゃないわ・・乳母でもないの・・私は私・・ただの女なのよ!」
壁を震わせる絶叫を残して、人妻は畳の上に崩れ落ちたようだった。
隆正は人妻の言葉を反芻しつつ、己が性の欲望を吐き出した。
隆正は小枝子を想った。
(別れるべきだろうか・・)
隆正はここ数年、小枝子との離婚を真剣に考えていた。
どう逆立ちしても、隆正は古河家の生活には馴染めそうもなかった。
こんなストレスを強いられるなら、全てを捨てて放浪の旅に出た方が気楽に思えた。
事実、このアパートを借りていること自体が、古河家と小枝子から逃避していることに他ならなかった。
そんな家名に押し潰された不甲斐ない婿養子に、女として飼い殺しにされている小枝子が気の毒だった。
小枝子は隆正に愛想を尽かしているに違いない。
否、母や隣の人妻同様、夫に頼らずとも、女として生きられる世界をすでに見つけているかもしれない。
隆正は再び畳の上で大の字に寝転んだ。
(潮時か・・)
天井の板目が涙で滲んで見えた。
このまま古河家に戻りたくなかった。
戻って来るなと、小枝子に宿る悪魔が拒んでいた。
隆正が安住できる居場所は、もはやこのアパートをおいて他になかった。
つづく…
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悪魔は女だった。
女は灰になっても女だという。妻でもなく母でもなく、女は女として死ぬために、性を司る悪魔を下腹部に秘めているのかもしれない。
「お、奥さん・・」
「あっ、あっ・・奥さんなんて厭・・私は夫の付属品じゃないわ・・乳母でもないの・・私は私・・ただの女なのよ!」
壁を震わせる絶叫を残して、人妻は畳の上に崩れ落ちたようだった。
隆正は人妻の言葉を反芻しつつ、己が性の欲望を吐き出した。
隆正は小枝子を想った。
(別れるべきだろうか・・)
隆正はここ数年、小枝子との離婚を真剣に考えていた。
どう逆立ちしても、隆正は古河家の生活には馴染めそうもなかった。
こんなストレスを強いられるなら、全てを捨てて放浪の旅に出た方が気楽に思えた。
事実、このアパートを借りていること自体が、古河家と小枝子から逃避していることに他ならなかった。
そんな家名に押し潰された不甲斐ない婿養子に、女として飼い殺しにされている小枝子が気の毒だった。
小枝子は隆正に愛想を尽かしているに違いない。
否、母や隣の人妻同様、夫に頼らずとも、女として生きられる世界をすでに見つけているかもしれない。
隆正は再び畳の上で大の字に寝転んだ。
(潮時か・・)
天井の板目が涙で滲んで見えた。
このまま古河家に戻りたくなかった。
戻って来るなと、小枝子に宿る悪魔が拒んでいた。
隆正が安住できる居場所は、もはやこのアパートをおいて他になかった。
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